マーケティング爺のひとりごと

外資系7社でチューインガムから抗癌剤までのマーケティングを生業としていた引退老人です。使えそうなデータや分析、気になった出来事、思い出、日々思うことなどをボケ防止のため綴っています。にほんブログ村 経営ブログ 広告・マーケティングへ
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外資と日本企業の違いの一つにゼネラリスト志向vsスペシャリスト志向というのがある。日本企業の多く、特に大企業では新卒で入社して以降数年単位でいろんな部署を経験させ、仕事や会社の仕組みを覚えさせ最終的には適任と思われる業務に就かせる。いわるゆゼネラリストを育成してオールラウンドプレイヤーを作る。会社と製品のことは何でも分かるようになるが、この強みはその会社の中だけの強みであることが多く、他社ではすぐには通用しないことも多い。

一方外資系企業はその多くが新入社員の採用をしない、もしくは少数しかとらない。ほとんどが中途採用である。その採用に人事部門が係ることがすこぶる少ない。面接も採用も入社後上司となる数人で行う。採用後はすぐ前任者と同じように働き成果を出すことを期待される。つまり当該業務のスペシャリストとして採用され、他の部門への異動は限られた部門間(企画部門と営業部門など)で見られるだけである。採用時にはエージェントにどんな資質を持った人が必要かを書類にして渡す。こんな感じです(品質管理マネジャーの例)。
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これを読むと医薬品業界に15年以上(その内管理職経験が5年以上)、医薬品の新製品開発と申請及び承認のプロセス経験、グローバル組織やJVと一緒に働いた経験、オピニオンリーダーとの関係構築経験などが必須項目で、その他に薬剤、法規制や製造に関する専門知識、英語能力まで求められたら外資の同業で働いていたスペシャリストしか面接に進めない。当然これで採用されたマネージャーは新組織内で前職と同様の業務をこなし他部署への異動はまずない。上司と気まずい関係になったら次の会社を探すことになる、むろん同業で品質管理の仕事を。

品質管理だけでなくR&D(製品開発)、製造、マーケティング、経理・財務や物流、システムなどの専門知識が必要とされる部門も同様である。当然のことながら日本企業でもこれらの職種は専門職として存在するが、新卒社員かそれに近い社員を一から教育して育成するのが一般的だ。帝大しかなかった頃日本の企業は高等小学校を出たばかりの優秀な若者を大量に採用し社内で教育しはじめた。この社内育成システムが大卒の新卒者にも受け継がれている。育てた人材が早期退職しないように、長く働くほど給料が上がり、多額の退職金が受け取れる年功序列賃金体系とセットになった新卒の一括採用はこうして日本に根付いた。外資は日本企業が金をかけて育てた人材をかっさらっていると言うこともできる。

外資に専門職で中途入社するとあとはその部署で実績を上げて昇進するしかない。Up or Outという言葉があるように上に上がっていくか辞めるかのどちらかになる。ま、じっと首をすくめて我慢という手もあるが。組織が大きくなれば上級職へのチャンスは増えるが、そうでなければボスが昇進するか辞めるかして空席ができない限り上に行く機会は多くはない。空席ができても突然本社の外人が来たり、他の部署から横滑りでポジションを埋められることもある。するとあと2~3年待たなければいけない。外資でも昇進がないと大きな昇給は望めないので外部にそれを求めることになる。スペシャリスト(プロ)として採用された人はその技能でほかの会社でも十分に通用する人がほとんどだ。外資では転職の時に給料を上げないとあとで後悔する、と言う人は多い。




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コメント

 コメント一覧 (2)

    • 1. 鈴木浩介
    • 2022年02月19日 05:51
    • 外資で働くということ1-4
      一気に読ませて戴きました。約30年、営業として働きましたが、宗さんが書いて居られる通りでした。でも、小説のネタになるぐらいだからユニークな外資だったんでしょうね。ある人事部長に言われたことが鮮明に頭に残っていますが「こんなに人間関係の良い外資はみたことがない…」今、老舗食品メーカーのグループ会社で仕事をしていますが、THE日本🇯🇵の方が人間関係は、圧倒的に「変」ですね。
      総じて、良い会社だったと思いますし、恵まれた環境で仕事が出来たことが今に繋がってると感じています。全ての出会いに感謝ですね^ ^
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    • 2. 宗
    • 2022年02月19日 10:06
    • お読みいただきありがとうございます。
      一般的には家族経営的色彩が残るヨーロッパ系の外資のほうが日本人には居心地が良いといわれていました。確かにご一緒した会社は働きやすかったです。いくつか理由は考えられますが、ちいさなコングロマリットで事業として関連のない各事業部が自由裁量を持っていたこと。社長だって、1カテゴリーの会社なら強引に引っ張ることもできますが、任さないと理解できない製品や顧客がいましたものね。3社が合併してひとつにまとめることが難しかったことも自由裁量に拍車をかけました。カルチャーも異なったし、給与体系もボーナスの月数も違っていましたから。あとはマネジメントに恵まれたこと。会社そのものが勢い良く伸びていた時代だったこと。そんなところでしょうか。
      もっと前の時代には大変なこともあったようです。良い会社の良い時代にめぐり逢ったということでしょうか。
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