長い間ビタミンCやアスタキサンチンなど数種類のDHCのサプリメントを使ってきた。同じ成分量ならば最も安い価格の設定、というポリシーに賛同したし、社名の由来が大学翻訳センターの頭文字だというのもなんだか気に入っていた。しかし最近の創業者のHP上のメッセージやメディアに対する反論などを読んで決めた。もうDHC製品を買うことはない。
IMG_4177
企業が信頼を得るのには長い時間を要する。しかしそれを失うのはほんのちょっとした失敗とその失敗をを隠すことで簡単に、かつ短時間で起きてしまう。思い出すだけで何件かの事例ががある。

古くは1955年の森永ヒ素ミルク中毒事件で、安価であるという理由で工業用の安定剤に切り替えて使用し、ヒ素中毒で100人以上の幼児が死亡した。森永乳業は因果関係と責任を否定し続け裁判は長期化し森永製品の不買運動も起きた。会社側が中毒の原因をミルク中のヒ素化合物と認めたのは事件発生から15年後のことで、長引く裁判と会社の不誠実な態度もあり史上最大の不買運動となって森永乳業の信用と業績を大きく悪化させた。

1967年には「暮らしの手帖」の商品テストでポッカレモンの大瓶にはビタミンC が全く含有されていないと判明した(小瓶4種には配合されている)。ポッカレモンはビタミンCは生レモンの3倍強化されていると謳いテレビで大量のCMを流していた。かつ「生レモンの香り」をCMで訴求しながら天然レモン果汁ではなく合成レモンを使用していたことが問題視されて公取から排除命令が出された。製品回収も行われ販売元のニッカレモンは消費者の信頼を失い経営も大きく傾いた。

1985年にはパロマの室内設置型の瞬間湯沸かし器の動作不良による一酸化炭素中毒が起き、その後の20年間で21人が死亡した。当初会社は事故を把握していたが社内や業者には通知したが消費者に対しては全く告知がなく事故が続いた。パロマは会社と製品に責任はないとしていたが安全装置の劣化などが原因であることが判明すると一転して謝罪することとなり社長も辞任した。この事故により給湯器のシェアを大きく落としトップの座をリンナイに渡すこととなった。

2000年に雪印乳業で停電事故で発生したブドウ球菌に汚染された脱脂粉乳が加工乳に使われて戦後最大規模の食中毒事件を起こした。早期に発表して回収すれば大事にはならなかったかもしれないが、事実の隠蔽、発表の先延ばし、社長の失言などが相次ぎ、工場の操業停止と閉鎖、社長の退陣につながった。その後のグループ会社の牛肉偽装事件も重なり雪印グループは解体・再編へと追いやられた。それまで我が家はバターやチーズなどの乳製品は全部雪印だったがこの事件以降20年間一度も雪印製品および雪印メグミルク製品を買っていない。現在は管理は大丈夫だと思うが、信頼を失うとはこういうことだと思う。

2007年には不二家の使用期限切れの牛乳を使ったシュークリーム、同じく消費期限切れのリンゴ加工品を使ったアップルパイが判明し、その後ブドウ球菌による食中毒、異物混入事件などが次々と報道され不二家はすべての洋菓子の製造販売を休止した。スーパーやコンビニから不二家製品が撤去され社長は退任に追い込まれた。この年は不二家以外にも白い恋人や赤福の表示偽装が起き2007年の「今年の漢字」は「偽」に決まった。わが家の冷蔵庫にはいつもチョコが入っているがこの事件以降不二家のLOOKや袋物チョコの姿はない。日本人は忘れっぽいのか諦めやすいのか、上記の事故のことも多くの人がもう忘れてしまっているようだ。忘れるとまた同じことが起こる可能性があるので時々こうして思い出すことも必要だと思う。

これらの事例と比べるとDHCのケースは製造や製品の事故ではないし死者を出すような問題でもないので不祥事とは呼べないのかもしれない。しかし、残念に思うのは製品と価格に自信があるのならば、根拠を示さずに競合会社を中傷するのでなく、製品品質と価格で勝負を挑んで欲しかった、ということだ。製品を信頼し使っていただけに余計に残念に思う。



ランキング参加中です。クリックしていただけると励みになります。