浜松には日本を代表する楽器メーカーが2社あります。ヤマハと河合楽器製造所です。ライバル会社であり兄弟会社のようでもあります。サントリーとニッカのような関係でしょうか。
竹鶴政孝が10年働いた寿屋(現サントリー)から独立して自分の考えるウィスキーを作るべく大日本果汁(現ニッカウヰスキー)を興したように、河合小市はヤマハ風琴製作所(現ヤマハ)に弟子入りし、3年後に打弦響板の開発に成功して日本初のピアノ製造に貢献し、19年勤務の後河合楽器研究所を設立しました。何よりもすごいのは弟子入りしたのがわずか11歳だったこと。いくら天才技術者と呼ばれようがそんな少年にピアノの基幹部分の開発を全面的に任せた山葉寅楠もすごかった。竹鶴がいなかったらサントリーウィスキーはなかったであろうし、小市がいなければヤマハピアノは生まれなかったでしょう。
日本のピアノのシェアはヤマハが6割、河合が4割で推移していると言われるが、企業の規模の差は大きい。ヤマハ(株)の売り上げは約4330億円(ヤマハ発動機分は含まれていない)。一方の河合楽器は約724億円。6倍の差です。ヤマハが世界展開に力を入れ世界一のピアノシェアを誇るのに対し、河合も世界二位のシェアを維持しています。河合の売り上げ720億の中でピアノは570億と8割近くを占めるが、ヤマハのピアノを含めた楽器売り上げは2775憶と6割強でありその中でピアノは2割を占めるに過ぎません。
この事業規模の差は販売方式(ヤマハは特約店、河合は直営店)の差もあるが事業の多角化の差が大きいと思われます。ヤマハはオルガンから始まった楽器製造をピアノ、ハモニカ、シロフォンと拡げ、その後弦楽器や打楽器へと展開しました。音楽教室も全国に設立し、ポプコン開催など底辺の開拓にも力を入れたし、エレクトーンなどの電子楽器の製造も開始した。学校のブラスバンド部の楽器にははたいていヤマハのロゴがついていますよね。その後今は撤退してしまったがテニスラケットやアーチェリーなどのスポーツ用品(ゴルフクラブだけは現存)やリビング事業、リゾート事業まで幅を広げました。一方の河合も音楽教室だけでなく、絵画、英語、体育教室と教育事業に力を入れ、ピアノ材を利用した玩具なども作り、一時はゴルフ場経営までしましたが現在はピアノへの回帰が目立ちます。
上記はアンゾフの成長マトリクス図ですが、河合が更なる市場浸透、新素材を使ったピアノの新製品開発、海外市場開発に注力するのに対して、ヤマハはそれに加えて多角化を図っているのは明らかです。なんだかウィスキー等の酒類に執着するニッカと、酒類から発し清涼飲料、化粧品、医薬品、健康食品、レストラン事業にまで拡大するサントリーと似ています。現在の日本の人口減少、特に子供人口の減少を考えると国内での専業化は楽観できず多角化企業が有利な気もしますが、コロナ以降の海外市場拡大の困難さを考えるとこの先どうなるかは分かりません。
多角化はすればよいというものでもなく、最近では買収によって子会社を85まで増やしたRIZAPが赤字に苦しんでいるニュースがありましたね。もともとボディメイキング(ダイエット)、英会話、ゴルフスクールなど「三日坊主」になりがちなものを、個室に閉じ込めて専任トレーナが教え、かつスクール外でもスマホでチェックが入るという生徒を追い込むスタイルで成功したのですが、その後無謀と思える事業拡大で多角化に走りました。ジーンズメイト、サンケイリビング、イデアセンター、ぱど等の不振会社を買いまくったけれど「三日坊主」ビジネスで成功したビジネスモデルは通用せず、かつ人材が急拡大に追いつかず経営が行き詰まり外部から経営陣を招かざるを得なくなりました。
ヤマハやサントリーがその轍を踏むとも思えませんが、河合ならピアノ、ニッカならウィスキーという特化した専業メーカーが持つ強固なイメージ付けは持てないかもしれません。個人的にはそうした専業会社や製品を応援したくなります。そういえば昔我が家にあったピアノは河合だったし、娘が子供の頃に買った積木も河合でした。毎晩飲むウィスキーはニッカですし。
ちなみに河合楽器のピアノに記されているK.KAWAIのKは小市のKだそうです。
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竹鶴政孝が10年働いた寿屋(現サントリー)から独立して自分の考えるウィスキーを作るべく大日本果汁(現ニッカウヰスキー)を興したように、河合小市はヤマハ風琴製作所(現ヤマハ)に弟子入りし、3年後に打弦響板の開発に成功して日本初のピアノ製造に貢献し、19年勤務の後河合楽器研究所を設立しました。何よりもすごいのは弟子入りしたのがわずか11歳だったこと。いくら天才技術者と呼ばれようがそんな少年にピアノの基幹部分の開発を全面的に任せた山葉寅楠もすごかった。竹鶴がいなかったらサントリーウィスキーはなかったであろうし、小市がいなければヤマハピアノは生まれなかったでしょう。
日本のピアノのシェアはヤマハが6割、河合が4割で推移していると言われるが、企業の規模の差は大きい。ヤマハ(株)の売り上げは約4330億円(ヤマハ発動機分は含まれていない)。一方の河合楽器は約724億円。6倍の差です。ヤマハが世界展開に力を入れ世界一のピアノシェアを誇るのに対し、河合も世界二位のシェアを維持しています。河合の売り上げ720億の中でピアノは570億と8割近くを占めるが、ヤマハのピアノを含めた楽器売り上げは2775憶と6割強でありその中でピアノは2割を占めるに過ぎません。
この事業規模の差は販売方式(ヤマハは特約店、河合は直営店)の差もあるが事業の多角化の差が大きいと思われます。ヤマハはオルガンから始まった楽器製造をピアノ、ハモニカ、シロフォンと拡げ、その後弦楽器や打楽器へと展開しました。音楽教室も全国に設立し、ポプコン開催など底辺の開拓にも力を入れたし、エレクトーンなどの電子楽器の製造も開始した。学校のブラスバンド部の楽器にははたいていヤマハのロゴがついていますよね。その後今は撤退してしまったがテニスラケットやアーチェリーなどのスポーツ用品(ゴルフクラブだけは現存)やリビング事業、リゾート事業まで幅を広げました。一方の河合も音楽教室だけでなく、絵画、英語、体育教室と教育事業に力を入れ、ピアノ材を利用した玩具なども作り、一時はゴルフ場経営までしましたが現在はピアノへの回帰が目立ちます。
上記はアンゾフの成長マトリクス図ですが、河合が更なる市場浸透、新素材を使ったピアノの新製品開発、海外市場開発に注力するのに対して、ヤマハはそれに加えて多角化を図っているのは明らかです。なんだかウィスキー等の酒類に執着するニッカと、酒類から発し清涼飲料、化粧品、医薬品、健康食品、レストラン事業にまで拡大するサントリーと似ています。現在の日本の人口減少、特に子供人口の減少を考えると国内での専業化は楽観できず多角化企業が有利な気もしますが、コロナ以降の海外市場拡大の困難さを考えるとこの先どうなるかは分かりません。
多角化はすればよいというものでもなく、最近では買収によって子会社を85まで増やしたRIZAPが赤字に苦しんでいるニュースがありましたね。もともとボディメイキング(ダイエット)、英会話、ゴルフスクールなど「三日坊主」になりがちなものを、個室に閉じ込めて専任トレーナが教え、かつスクール外でもスマホでチェックが入るという生徒を追い込むスタイルで成功したのですが、その後無謀と思える事業拡大で多角化に走りました。ジーンズメイト、サンケイリビング、イデアセンター、ぱど等の不振会社を買いまくったけれど「三日坊主」ビジネスで成功したビジネスモデルは通用せず、かつ人材が急拡大に追いつかず経営が行き詰まり外部から経営陣を招かざるを得なくなりました。
ヤマハやサントリーがその轍を踏むとも思えませんが、河合ならピアノ、ニッカならウィスキーという特化した専業メーカーが持つ強固なイメージ付けは持てないかもしれません。個人的にはそうした専業会社や製品を応援したくなります。そういえば昔我が家にあったピアノは河合だったし、娘が子供の頃に買った積木も河合でした。毎晩飲むウィスキーはニッカですし。
ちなみに河合楽器のピアノに記されているK.KAWAIのKは小市のKだそうです。
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