明治のチェルシーが今月いっぱいで販売中止と発表された。菓子の仕事をしていた人間からするとちょっとショックだったし、寂しい気がする。日本のキャンディのリーディングブランドだったし、とてもおいしい飴だった。なによりもあの「歌いたくなるよな一日 あなたにもわけてあげたい ほらチェルシー もひとつチェルシー」のCMソングとスコットランドの風景をバックにした広告が頭に残っている。
市場環境や顧客ニーズの変化で収益が落ち込み販売を終了せざるを得ない、というのが終売の理由らしいが、一時代を築いたブランドがピークの数分の一とは言えまだ数億の売り上げがあるのに消えていくのはなんだか悲しい。
チェルシーは1971年に明治製菓が今までにない特徴とおいしさを求めて開発・発売したスカッチキャンディだった。多くの飴はロープ状の飴を型で打ち抜いて作るが(スタンピング製法)、チェルシーは流し込み(デポジット)という小さな型に熱い飴を流し入れて冷ます製法だった。この製法だと設備は大掛かりになるが表面が滑らかになりバターの含有も増やせる。ミルクリッチな味と滑らかな舌触りはそれまでの日本のキャンディにはなく、一気にトップブランドとなった。80年代に私はホールズという飴を担当していて、製品としては直接競合はしないが同じキャンディカテゴリーのトップシェアのブランドをベンチマークにして追いかける立場だった。
明治製菓はそのチェルシーに加えて1988年に果汁グミを発売し、2年後の1990年には群雄割拠のキャンディ市場で16.8%のシェアを獲得し、カンロを抜いてNo.1カンパニーとなった。私が所属していた菓子事業部でもチェルシーに対抗するバタースコッチを発売しようと開発を始めた。森永製菓から招聘した開発部長とともに試作を始めたのだが、何度トライしてもチェルシーを超える製品はできない。開発部長も「いや~チェルシーはおいしい」と半分お手上げだった。結局チェルシーとの真っ向勝負を避け側面攻撃策をとり、バタースカッチでなくミント味とラム味のスカッチ二品を「エナ」というブランドで発売した。
スコットランドを想起させるタータンチェックのパッケージとスティック形状でチェルシーと差別化を図り、アリッサ・ミラノが歌うCMソングのTV広告でサポートしたが惨敗だった。2年ですごすごと撤退した。そのくらいチェルシーは強かった。そのチェルシーが売り上げ不振で終売となるなんて。
経営資源の効率化を追求するとこうなるのかもしれないが、明治は諦めが早すぎるようにも見える。数年前には60億もの売り上げがあったカールの東日本での販売を中止したし、94年の歴史があったカルミン、クリームキャラメル、根強いファンのいたサイコロキャラメルも終売になった。2011年に医薬品事業と統合することになって、利益率がダントツに高い医薬品と比べると菓子の経営的な魅力が薄れたのかもしれない。ガムからも撤退し、キャンディ、キャラメルもなくなった明治の菓子事業はこれからはチョコレートとグミに選択集中することになるんだろうなあ。
市場環境や顧客ニーズの変化で収益が落ち込み販売を終了せざるを得ない、というのが終売の理由らしいが、一時代を築いたブランドがピークの数分の一とは言えまだ数億の売り上げがあるのに消えていくのはなんだか悲しい。
チェルシーは1971年に明治製菓が今までにない特徴とおいしさを求めて開発・発売したスカッチキャンディだった。多くの飴はロープ状の飴を型で打ち抜いて作るが(スタンピング製法)、チェルシーは流し込み(デポジット)という小さな型に熱い飴を流し入れて冷ます製法だった。この製法だと設備は大掛かりになるが表面が滑らかになりバターの含有も増やせる。ミルクリッチな味と滑らかな舌触りはそれまでの日本のキャンディにはなく、一気にトップブランドとなった。80年代に私はホールズという飴を担当していて、製品としては直接競合はしないが同じキャンディカテゴリーのトップシェアのブランドをベンチマークにして追いかける立場だった。
明治製菓はそのチェルシーに加えて1988年に果汁グミを発売し、2年後の1990年には群雄割拠のキャンディ市場で16.8%のシェアを獲得し、カンロを抜いてNo.1カンパニーとなった。私が所属していた菓子事業部でもチェルシーに対抗するバタースコッチを発売しようと開発を始めた。森永製菓から招聘した開発部長とともに試作を始めたのだが、何度トライしてもチェルシーを超える製品はできない。開発部長も「いや~チェルシーはおいしい」と半分お手上げだった。結局チェルシーとの真っ向勝負を避け側面攻撃策をとり、バタースカッチでなくミント味とラム味のスカッチ二品を「エナ」というブランドで発売した。
スコットランドを想起させるタータンチェックのパッケージとスティック形状でチェルシーと差別化を図り、アリッサ・ミラノが歌うCMソングのTV広告でサポートしたが惨敗だった。2年ですごすごと撤退した。そのくらいチェルシーは強かった。そのチェルシーが売り上げ不振で終売となるなんて。
経営資源の効率化を追求するとこうなるのかもしれないが、明治は諦めが早すぎるようにも見える。数年前には60億もの売り上げがあったカールの東日本での販売を中止したし、94年の歴史があったカルミン、クリームキャラメル、根強いファンのいたサイコロキャラメルも終売になった。2011年に医薬品事業と統合することになって、利益率がダントツに高い医薬品と比べると菓子の経営的な魅力が薄れたのかもしれない。ガムからも撤退し、キャンディ、キャラメルもなくなった明治の菓子事業はこれからはチョコレートとグミに選択集中することになるんだろうなあ。