英語でNationalは国家主義者のような印象を与えるので、海外市場ではPanasonicを使ってきた松下電器の社名変更は創業90年目の大変革だった。それまで国内市場では革新的な洗練された非白物製品には「パナソニック」を、伝統的または家庭的な白物製品には「ナショナル」と二つのブランドを使い分けてきた松下電器がグローバル企業を目指すという宣言でもあった。(当時その2ブランド以外にTechnicsというオーディオ事業ブランドもあった ー 2014年に復活)

Nationalが誤解を与える可能性があるのでPanasonicに社名およびブランド名変更をしたようなものだが、同じようなことはアメリカでもいくつかみられる。日本ではKentucky Fried Chickenが社名だがアメリカではFriedが油や高カロリー、肥満を想像させマイナスイメージを与えるので短縮されて常にKFCと表現されている。同様にFederal ExpressはFederalが連邦主義や連邦主義者を連想させるので短縮したFedEx Corporationが正式名となっている。
こうしたネガティブに受け取られかねない社名を変更する例は日本でもある。ニチアスはかつては日本アスベストという社名だったが、アスベストによる健康被害問題や訴訟が起こり1981年に社名を変更した。ネガティブというわけではないが帝人は1962年に帝国人造絹絲(株)から、東レとクラレは1970年に東洋レーヨン(株)と倉敷レーヨン(株)からそれぞれ社名変更している。強度や環境問題もあり化学繊維に押されてレーヨン(人絹)は生産されなくなり人絹やスフ、レーヨンという言葉も忘れ去られつつある。今風でないというならキヤノンもその一例かもしれない。以前は精機光学研究所という社名で、日本初の精密小型カメラの試作機に千手観音からヒントを得てKWANONと名付け、これが後にCanonというカメラのブランド名になり、その後1969年には社名になってしまった。

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