2020年10月
昭和の菓子

チョコフレークも終売なのですね(2019年夏に生産終了)。一時ツイッギーがCMに出たりしてあの頃の代表的なチョコ菓子だったのですけれど。好きだったバブリシャスも終売になったし、キスミントも昨年の2月に生産を終えている。江崎グリコの地元関西では80年代後半からずっとトップブランドで、関東でもシェア9%を保持していたのに。
コンビニでの販売ウェイトが上がりSNSの影響力が強まり、ロングセラー、定番商品も常に手を打っていないと安泰とはいかないのですね。サイコロキャラメルもカルミンもノースキャロライナも消え、関東ではカールも売られていない。昭和の菓子が少なくなっていく。
子供人口の減少や消費者の嗜好の変化もその理由だろうけど、ひとつには新製品が多すぎるのでしょう。毎年少しだけ模様替えをしてチョコレートで800、キャンディで900、米菓で1100もの新製品を出し続けているメーカーにも責任はありますね。新製品は既存製品の陳腐化を招き、店頭で棚の取り合いとなり新発売された製品の数だけの旧製品が消えていきます。消費者段階と店頭段階での二つのカニバリゼーションを引き起こします。
昔菓子の仕事をしている時に「たとえ100人でも買ってくれる熱心なファンがいる限り製品を販売し続けるのはメーカーの使命・義務ではないだろうか」、「いやいや、回転の悪いSKUを持っていると製造設備の稼働率が下がり、在庫も増えて採算が悪くなり他の製品へのサポートが減って共倒れになる可能性がある」という議論をしたことを思い出しました。もちろん後者が優勢でした、まだPOSがない頃ではありましたが。今なら週販がすべてを決めるのでこんな議論さえ起きないのでしょうね。
ランキング参加中です。クリックしていただけると励みになります。
5秒コマーシャル
子供の頃から広告が好きだった(17)
テレビ広告が始まったころCMのほとんどは60秒だった。精工舎の時報広告も最初は60秒だったし、番組内の広告は生CMが中心で3分の生CMもあった。発売されたばかりのチキンラーメンのCMはお湯をかけて食べるまでの3分生CMだったのを覚えている。1961年に15秒CMが流れるようになり、翌年から5秒CMが放映され始めた。5秒という短尺なので記憶に残るようなキャッチーなフレーズとブランド名を記憶させる工夫を凝らしたコマーシャルが流れた。
今でも覚えている5秒CMのフレーズは「なんである アイデアル」、「コニカはコニカ いいと思うよ」、「インド人もびっくり」、「アサヒスタイニー アッ」などだがその他にもたくさんあったと思う。総量としては決して多くはなかったと思うが印象は結構強烈だった。しかし短尺CMは製品の特徴を訴えるより認知を獲得することを主眼にしたためあざとい表現が増え、コスト安で露出頻度も増加したためしつこくてうるさい印象が強まり、1965以降はキー局の5秒枠の販売停止もあって激減してしまった。

しかし高騰するメディア費に対応するため広告主サイドも新たなアイデアを絞り出し、CMの最後の数秒に他の製品広告を加えるタグオンという手法を使い始めた。例えば有名な例では、オリエンタルスナックカレーのCMの末尾に「ハヤシもあるでよ~」を付け加えたり、オロナミンCの広告の最後に「ボンカレーもよろしく」を足すなどのダブルブランド広告である。が、これも局側が広告総量が増えた印象を与えるとして規制されるようになり、現在では同じブランドのラインエクステンション製品だけに可能のようである(今日見たのは、歯磨き粉のCMの最後に同ブランドのマウスウォッシュの宣伝)。
個人的には5秒CMは好きだ。短いうえに音声にはノンモン部分を加味せねばならず、実際には4秒しか使えない。それだけ制作者は知恵を使って広告を作る。主流である15秒CMも製品特徴や対競合優位性を訴えるものは少なく5秒で十分だと思わせるCMも多い。最近ではYouTubeの頭にCMが入ることが多く、4秒後にスキップできるものもあるがスキップ機能のないバンパー広告と呼ばれる6秒CMも増えている。6秒は我慢できる限界内のような気がするし、音を出さずに聞くことが多いモバイル環境で画面さえ魅力的であれば苦も無く見終えてしまう。これは専用のCMが作られていることとも関連していると思う。TV用に作られたCMをそのまま流すと小さな画面には向かない画像が多く、かつ音声に依存しているので無音ではメッセージが伝わりにくいのはトレインチャンネルで経験済みだ。モバイル専用CMはこれらを解決し、かつリアクションも早いので問題点をすぐ修正して流すことも可能だ。
モバイルだけでなくアメリカではTVでの6秒CMも流され効果の検証が始められている。価格面ではそれほど優位ではないが注視率が高いこと、特に普段TV広告に関心があまりない層で高いことが報告されている。アメリカでも日本同様テレビ離れが起きていて、その一つの理由がCMの多さだと言われている。CMのないNetflixなどのビデオオンデマンドサービスに対抗するためにも広告総量を減らすことができそうな短尺CMに期待したい。

ランキング参加中です。クリックしていただけると励みになります。
テレビ広告が始まったころCMのほとんどは60秒だった。精工舎の時報広告も最初は60秒だったし、番組内の広告は生CMが中心で3分の生CMもあった。発売されたばかりのチキンラーメンのCMはお湯をかけて食べるまでの3分生CMだったのを覚えている。1961年に15秒CMが流れるようになり、翌年から5秒CMが放映され始めた。5秒という短尺なので記憶に残るようなキャッチーなフレーズとブランド名を記憶させる工夫を凝らしたコマーシャルが流れた。
今でも覚えている5秒CMのフレーズは「なんである アイデアル」、「コニカはコニカ いいと思うよ」、「インド人もびっくり」、「アサヒスタイニー アッ」などだがその他にもたくさんあったと思う。総量としては決して多くはなかったと思うが印象は結構強烈だった。しかし短尺CMは製品の特徴を訴えるより認知を獲得することを主眼にしたためあざとい表現が増え、コスト安で露出頻度も増加したためしつこくてうるさい印象が強まり、1965以降はキー局の5秒枠の販売停止もあって激減してしまった。

しかし高騰するメディア費に対応するため広告主サイドも新たなアイデアを絞り出し、CMの最後の数秒に他の製品広告を加えるタグオンという手法を使い始めた。例えば有名な例では、オリエンタルスナックカレーのCMの末尾に「ハヤシもあるでよ~」を付け加えたり、オロナミンCの広告の最後に「ボンカレーもよろしく」を足すなどのダブルブランド広告である。が、これも局側が広告総量が増えた印象を与えるとして規制されるようになり、現在では同じブランドのラインエクステンション製品だけに可能のようである(今日見たのは、歯磨き粉のCMの最後に同ブランドのマウスウォッシュの宣伝)。
個人的には5秒CMは好きだ。短いうえに音声にはノンモン部分を加味せねばならず、実際には4秒しか使えない。それだけ制作者は知恵を使って広告を作る。主流である15秒CMも製品特徴や対競合優位性を訴えるものは少なく5秒で十分だと思わせるCMも多い。最近ではYouTubeの頭にCMが入ることが多く、4秒後にスキップできるものもあるがスキップ機能のないバンパー広告と呼ばれる6秒CMも増えている。6秒は我慢できる限界内のような気がするし、音を出さずに聞くことが多いモバイル環境で画面さえ魅力的であれば苦も無く見終えてしまう。これは専用のCMが作られていることとも関連していると思う。TV用に作られたCMをそのまま流すと小さな画面には向かない画像が多く、かつ音声に依存しているので無音ではメッセージが伝わりにくいのはトレインチャンネルで経験済みだ。モバイル専用CMはこれらを解決し、かつリアクションも早いので問題点をすぐ修正して流すことも可能だ。
モバイルだけでなくアメリカではTVでの6秒CMも流され効果の検証が始められている。価格面ではそれほど優位ではないが注視率が高いこと、特に普段TV広告に関心があまりない層で高いことが報告されている。アメリカでも日本同様テレビ離れが起きていて、その一つの理由がCMの多さだと言われている。CMのないNetflixなどのビデオオンデマンドサービスに対抗するためにも広告総量を減らすことができそうな短尺CMに期待したい。
ランキング参加中です。クリックしていただけると励みになります。
無印良品の発酵ぬかどこ
無印良品の「発酵ぬかどこ」が売れているらしい。対前年比2倍だと言う。毎日かき混ぜなくても良い手軽さが受けたとか、コロナ禍で自炊が増え「ぬか女」が糠漬を楽しんでいるからだ、とも。

早速買ってみた。チャック付きポリ袋に1キロ入って890円。通常のぬか床より値段は高いが棚に並べるとすぐ完売になるらしい。抗菌性の高い乳酸菌を使って特許を持つ工場で製造しているからこの値段も仕方ないか。漬ける容器もいらないし、かき混ぜるのは週に一度でいいし、捨て漬けも不要とのことだ。SNS上では手軽で失敗しないだとか、キュウリやナスも良いけどアボカドやゆで卵を漬けるとおいしいとかの投稿も多い。
まず王道のキュウリを漬けてみた。いままで使っていたぬか床は一日では味が浅く二日だと濃くなるが色が褐変しておいしそうには見えなかったが、このぬか床は表示通り12時間から18時間でちゃんと漬かり色も鮮やかな緑のままだ。最初なので少し塩辛いがそのうち丸くなるだろう。今までもポリ袋でぬか漬けをしていたが厚手のチャック付きは便利だし補充用の少量ぬか床を売っているのもありがたい。確かにヒットする要素はいくつかある。

最近の無印は衣料や日用品より食品のヒットが多い。フライパンでつくるナン、ごはんにかけるシリーズ、ひとくちスウィーツ、コオロギせんべい(食べる気はしない)などあるが一番はやっぱりレトルトカレーだろう。先日もTV番組で無印のレトルトカレーのランキング特集があった。他にはないユニークなカレーが多く、評者の料理人たちもスパイスの使い方が素晴らしい、辛味・酸味・旨味のバランスが良い、レトルトを超えた、黙って出されたらレトルトとは思えないなどと絶賛だった。
驚いたことに無印良品では製品発売の前に市場調査は実施しないという。製品デザイン設計時の顧客アンケート実施、消費者の声の収集、聞き取り、観察を基に開発を始める顧客参加型開発が主流だ。開発のために消費者とのコミュニケーションを図る「くらしの良品研究所」も設立されている。開発段階で顧客の声を聴くので開発後はテストの必要がないということなのかもしれない。レトルトカレーもカレーを主食とする国々を廻り、材料や作り方だけでなく現地風の食べ方まで学び、日本に帰ってそれを再現する作業からあの製品群が生まれたとのことである。試食を何度も繰り返して消費者テストをすることはない。もし実施したら日本で馴染みのない味ならば高評価を得られず消えていくのが運命なのかも知れない。
自分が30数年やってきた製品開発とはずいぶん異なる。外資では消費者テストを繰り返しコンセプトとの合致度、受容性や購買意向率を高めるよう製品改良を行い、平均点が高い製品にするように努力する。万人受けする製品はできるが、なかなか尖がった製品は生まれにくい。無印のやり方は、消費者が想像もできないものを製品化して驚かせるのだから調査には意味がないというアップルの考え方に多少通じるところがあるかもしれない。どちらが優れているとは言えないが競合の激しい分野では無印の方法は有効だろうと思う。
さ、卵もゆでたしアボカドも買ってきたのでぬか床に漬け込むとしよう。

ランキング参加中です。クリックしていただけると励みになります。

早速買ってみた。チャック付きポリ袋に1キロ入って890円。通常のぬか床より値段は高いが棚に並べるとすぐ完売になるらしい。抗菌性の高い乳酸菌を使って特許を持つ工場で製造しているからこの値段も仕方ないか。漬ける容器もいらないし、かき混ぜるのは週に一度でいいし、捨て漬けも不要とのことだ。SNS上では手軽で失敗しないだとか、キュウリやナスも良いけどアボカドやゆで卵を漬けるとおいしいとかの投稿も多い。
まず王道のキュウリを漬けてみた。いままで使っていたぬか床は一日では味が浅く二日だと濃くなるが色が褐変しておいしそうには見えなかったが、このぬか床は表示通り12時間から18時間でちゃんと漬かり色も鮮やかな緑のままだ。最初なので少し塩辛いがそのうち丸くなるだろう。今までもポリ袋でぬか漬けをしていたが厚手のチャック付きは便利だし補充用の少量ぬか床を売っているのもありがたい。確かにヒットする要素はいくつかある。

最近の無印は衣料や日用品より食品のヒットが多い。フライパンでつくるナン、ごはんにかけるシリーズ、ひとくちスウィーツ、コオロギせんべい(食べる気はしない)などあるが一番はやっぱりレトルトカレーだろう。先日もTV番組で無印のレトルトカレーのランキング特集があった。他にはないユニークなカレーが多く、評者の料理人たちもスパイスの使い方が素晴らしい、辛味・酸味・旨味のバランスが良い、レトルトを超えた、黙って出されたらレトルトとは思えないなどと絶賛だった。
驚いたことに無印良品では製品発売の前に市場調査は実施しないという。製品デザイン設計時の顧客アンケート実施、消費者の声の収集、聞き取り、観察を基に開発を始める顧客参加型開発が主流だ。開発のために消費者とのコミュニケーションを図る「くらしの良品研究所」も設立されている。開発段階で顧客の声を聴くので開発後はテストの必要がないということなのかもしれない。レトルトカレーもカレーを主食とする国々を廻り、材料や作り方だけでなく現地風の食べ方まで学び、日本に帰ってそれを再現する作業からあの製品群が生まれたとのことである。試食を何度も繰り返して消費者テストをすることはない。もし実施したら日本で馴染みのない味ならば高評価を得られず消えていくのが運命なのかも知れない。
自分が30数年やってきた製品開発とはずいぶん異なる。外資では消費者テストを繰り返しコンセプトとの合致度、受容性や購買意向率を高めるよう製品改良を行い、平均点が高い製品にするように努力する。万人受けする製品はできるが、なかなか尖がった製品は生まれにくい。無印のやり方は、消費者が想像もできないものを製品化して驚かせるのだから調査には意味がないというアップルの考え方に多少通じるところがあるかもしれない。どちらが優れているとは言えないが競合の激しい分野では無印の方法は有効だろうと思う。
さ、卵もゆでたしアボカドも買ってきたのでぬか床に漬け込むとしよう。
ランキング参加中です。クリックしていただけると励みになります。
