子供のころから広告が好きだった(38)
たいていの消費財商品は使用者が自分で購入することが多い。しかし亭主に頼まれて下着やカミソリの替え刃を主婦が買うとか、おじいちゃんの入歯洗浄剤を頼まれるということもあるだろう。この使用者と購入者が一致しない最大の製品群は子供が食べたり使ったりする商品だ。子供の服や文房具などはその典型であるが、子供が食べる食品・菓子類や飲料もその種の製品だ。
子供が母親に買ってくれとねだる場合もあれば、母親が子供のために買い与える製品もある。支払いをするのは母親なので企業は母親をターゲットとする。両者が満足する商品ならば問題ないが、そんな商品は多くはない。今日もスーパーで子供がアンパンマンアイスだかガリガリ君だかを買ってくれとねだり、母親が駄目と言っているのを見た。昔はコーラが飲みたいのに「骨が溶けるよ」と訳の分からぬ理由でノーと言われた子供が多かった。
そんななかで子供と母親の両方をうまく説得した広告の一つがかっぱえびせんではなかろうか。

やめられない とまらない かっぱえびせん。このCMソングは60年近く流されている。アメリカには「この世で最も勇気のある者はピーナッツを一粒食べてそこで止められる男だ」という格言があるが、エビ好きの日本人はかっぱえびせんもひとつでは止められない。かっぱえびせんは製品と広告の秀逸さであっという間にスナック菓子のトップブランドになり、カルビーの名を知らせしめ、その後のサッポロポテト、ポテトチップス、じゃがりこなどの同社製品開発・発売の財政基盤を作った。同時にかっぱえびせんは日本を代表するロングセラー菓子となった。
ただおいしいだけの菓子ではない。当時の菓子はせんべいやあられ以外は甘いものばかりだった。すこし塩味の効いたエビの風味の軽いスナック。養殖魚のエサにしか使われていなかった小エビを丸ごと使っているので子供の成長に必要なカルシウムに富む。それを直接的に訴求するのでなく、CMソングを「かしこい母さん かっぱえびせん」で締めることで子供のために製品を選択した母親の心をくすぐった。かしこい母さん かっぱえびせん。うまい表現だった。栄養価の高い未利用資源の有効活用を社是とするカルビーの面目躍如だ。
そう思うのは昔の経験から来ている。日本人に恒常的に不足している栄養素はカルシウムだけだったので、カルシウム含有の子供向けの菓子を作って販売したことがある。ターゲットを子供だけにしたことが間違いだった。子供はカルシウムの必要性なんか気にしない。母親を巻き込むべきだったのだ。
その前にはシュガレスガムを「これならママもOKさ」というキャッチコピーで広告を打っていた。製品としては成功した部類だったが、今思うと子供はもっと甘くて量のある砂糖入りのガムを噛みたかっただろうし、母親はシュガレスでもガムは噛ませたくなかったのではなかろうか。違う表現があってもしかるべきだった。
カルシウムにしろシュガレスガムの例にしろとかく外資は頭でっかちになりがちで、コンセプトだけで物が売れると考えるのが弱みかもしれない。マーケティングの教科書に「コンセプトで牛を川辺に連れていくことはできるが、水を飲ませることはできない」とあった。C(コンセプト)+P(プロダクトパフォーマンス)のバランスが大事なのだ。それと、この国では機能的ベネフィットだけではなく情緒的ベネフィットも付加すべきだった、というのが40年経ったあとの反省だ。遅すぎる。
たいていの消費財商品は使用者が自分で購入することが多い。しかし亭主に頼まれて下着やカミソリの替え刃を主婦が買うとか、おじいちゃんの入歯洗浄剤を頼まれるということもあるだろう。この使用者と購入者が一致しない最大の製品群は子供が食べたり使ったりする商品だ。子供の服や文房具などはその典型であるが、子供が食べる食品・菓子類や飲料もその種の製品だ。
子供が母親に買ってくれとねだる場合もあれば、母親が子供のために買い与える製品もある。支払いをするのは母親なので企業は母親をターゲットとする。両者が満足する商品ならば問題ないが、そんな商品は多くはない。今日もスーパーで子供がアンパンマンアイスだかガリガリ君だかを買ってくれとねだり、母親が駄目と言っているのを見た。昔はコーラが飲みたいのに「骨が溶けるよ」と訳の分からぬ理由でノーと言われた子供が多かった。
そんななかで子供と母親の両方をうまく説得した広告の一つがかっぱえびせんではなかろうか。

やめられない とまらない かっぱえびせん。このCMソングは60年近く流されている。アメリカには「この世で最も勇気のある者はピーナッツを一粒食べてそこで止められる男だ」という格言があるが、エビ好きの日本人はかっぱえびせんもひとつでは止められない。かっぱえびせんは製品と広告の秀逸さであっという間にスナック菓子のトップブランドになり、カルビーの名を知らせしめ、その後のサッポロポテト、ポテトチップス、じゃがりこなどの同社製品開発・発売の財政基盤を作った。同時にかっぱえびせんは日本を代表するロングセラー菓子となった。
ただおいしいだけの菓子ではない。当時の菓子はせんべいやあられ以外は甘いものばかりだった。すこし塩味の効いたエビの風味の軽いスナック。養殖魚のエサにしか使われていなかった小エビを丸ごと使っているので子供の成長に必要なカルシウムに富む。それを直接的に訴求するのでなく、CMソングを「かしこい母さん かっぱえびせん」で締めることで子供のために製品を選択した母親の心をくすぐった。かしこい母さん かっぱえびせん。うまい表現だった。栄養価の高い未利用資源の有効活用を社是とするカルビーの面目躍如だ。
そう思うのは昔の経験から来ている。日本人に恒常的に不足している栄養素はカルシウムだけだったので、カルシウム含有の子供向けの菓子を作って販売したことがある。ターゲットを子供だけにしたことが間違いだった。子供はカルシウムの必要性なんか気にしない。母親を巻き込むべきだったのだ。
その前にはシュガレスガムを「これならママもOKさ」というキャッチコピーで広告を打っていた。製品としては成功した部類だったが、今思うと子供はもっと甘くて量のある砂糖入りのガムを噛みたかっただろうし、母親はシュガレスでもガムは噛ませたくなかったのではなかろうか。違う表現があってもしかるべきだった。
カルシウムにしろシュガレスガムの例にしろとかく外資は頭でっかちになりがちで、コンセプトだけで物が売れると考えるのが弱みかもしれない。マーケティングの教科書に「コンセプトで牛を川辺に連れていくことはできるが、水を飲ませることはできない」とあった。C(コンセプト)+P(プロダクトパフォーマンス)のバランスが大事なのだ。それと、この国では機能的ベネフィットだけではなく情緒的ベネフィットも付加すべきだった、というのが40年経ったあとの反省だ。遅すぎる。














