マーケティング爺のひとりごと

外資系7社でチューインガムから抗癌剤までのマーケティングを生業としていた引退老人です。使えそうなデータや分析、気になった出来事、思い出、日々思うことなどをボケ防止のため綴っています。にほんブログ村 経営ブログ 広告・マーケティングへ
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2024年10月

博報堂生活総合研究所が調理寿命・調理定年は何歳なのかということをネット調査(24年3月 n=1500)に基づいて紹介している。これは仕事に定年があるように、ある年齢に達したら手作り料理主義を放棄しても良いのではないかという評論家の樋口恵子氏の提唱をベースにした調査らしい。氏の説は歳をとったら市販の総菜、レトルト、テイクアウト、外食を活用して楽をしようという考えで、女性を中心に支持が集まっているとのことだ。わが家でも私の定年退職と同時に家内が料理を卒業し、そのかわり私が17年間料理担当となっている。

博報堂によると調理寿命・調理定年には二種類あり、ひとつは料理をする気力がなくなる「ココロの調理寿命」、もうひとつが料理をするのが体力的にきつくなる「カラダの調理寿命」だという。確かに歳ともに食欲が落ち、料理をする気が起きない日が増えるし、重い鍋や鉄フライパンを振る元気がない日も多くなる。調査データによると作る気力が失せるのが全体では56歳(女性は57歳)、体力的に駄目になるのが63歳(女性は65歳)らしい。ということは、うちの家内も私の定年の少し前ににプッツンしていたということかもしれない。
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このデータで面白いのは、食べるのにも寿命・定年があるのではないかという発想だ。確かに歳をとると食べる量が減るだけでなく、脂っこいものを敬遠するようになるし、淡泊な和食に回帰する老人も多い。調査によると平均では44歳で若いころより食が細くなり大盛を頼むことができなくなる。いくらおいしい店でも行列までしてラーメンを食べようとは思わなくなるのが45歳。そこまでしてうまいものを食べようという意欲が失せるのですね。ガツガツ食べていた好きな焼肉が胃に重たく感じられるようになって控えるようになるのが50歳から51歳としている。
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これはなんだかわかる気がする。すでに大盛を頼んだり、店の前で並ぶようなことをしなくなって20年は経っている。夕食でもご飯のお替りをすることはもうない。ただ脂っこいものは相変わらず好きで、焼肉、ロースかつや鰻、揚げ物はローテーションに含まれている。今日も夕食用に海老フライを揚げた。健康のことを考えるとさすがに昔のように量は食べられないけど。

最近は高齢者の一人暮らしが多いし、食材の値上がりが激しいので、一人で調理するよりテイクアウトしたりUberで頼んだり、中食したり、市販の総菜を買う方が食品ロスも少なくて効率的なこともあるらしい。夕方のデパ地下やスーパーの弁当や総菜売り場では値下げシールが貼られるのを待っている高齢者や外人さんをよく見かける。調理寿命は年齢だけでなく孤食が増えていることも影響しているのだろう。博報堂の国際比較データでも「食事を買う」「一人で食べる」は8カ国中日本が1位だった。

歩きスマホをしている若者を毎日見かける。老人はそれができない。立ち止まってスマホを少し遠ざけながら、時には老眼鏡をかけ直して画面を見る。若者のように片手で操作はできず、左手でスマホを持ち右手でゆっくり文字入力をする。でも多くの老人は数年前までは二つ折りのガラケーを使っていたのだ。スマホに変えただけ進歩と言うことはできる。特に女性は。

ハルメク生き方上手研究所が調査した55歳から74歳女性の「シニア女性のデジタル活用事情」 によると、彼女らのスマホ利用率は昨年は96.9%で前年から2.6ポイント伸びている。コロナ禍で人と人をつなぐコミュケーション手段としてスマホがシニアに注目されたと言ってよいだろう。増加は主にガラケーからのスイッチと思われるが、コロナ禍でシニア女性層がオンライン決済やQR決済の必要性に迫られたこと、外出ができなくなってネットショッピングやLINEを使いだしたことも要因だと考えられる。下降傾向にあったパソコン利用率がコロナが拡大した2020年から回復しはじめ昨年は49.1%と前年から7.6ポイントも上がったことがそれを裏付けている。
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スマホに変えることによって生活が変わったこともデータが示している。電通シニアラボの「シニアのスマホライフ実態調査」によると、60代70代の6割強がスマホを持って生活が良くなったと回答しており、「とても良くなった」と答えたのは女性の方が明らかに高かった。彼女らがスマホの価値を評価した項目としては、「分からないことをすぐ調べられる」「暇な時間を楽しむことができる」「社会の動きや流行が分るようになる」などを挙げている。スマホに変えてちょっぴりハッピーになったシニア女性の喜ぶ顔が見えるようだ。
2024-10-12
当然デメリットもあり、「目が疲れる」「用もないのにスマホを見てしまう」「スマホ頼りになり自分で憶えなくなった」などが挙げられているが、これはシニアだけではなくすべてのユーザー共通だろう。

シニア女性の方が男性よりもスマホの恩恵を受けているのは、男性は現役のころから日常的にパソコンを使っていたため引退後も調べ物やECでの買い物をパソコンでもするのに対し、女性はパソコンを何らかの目的で利用している人は半数以下で、メールや検索もほとんどをスマホでするからだと思われる。NTTドコモモバイル社会研究所のデータによると、情報の検索をシニア女性の78%はスマホで行い、パソコンを使う人は9%しかいない。

我が家の家内も数年前にスマホに変え、現在は2台目を使用中だ。最近はPCを触っている時間よりもスマホを手にしている時間の方が長い。検索やLINEだけでなくチケットの予約をしたり、ポイントで買い物をしているようだ。ちいさいのと外に持ち出せるのが便利なのだと思う。文字や絵を簡単に拡大できるのもスマホならではだ。特に老人にはありがたい。アプリを使えるようにはなったのだが、画面がフリーズしたり、メッセージが出たりするたびに日に何回も「これはどうすればいい?」と聞きに来るのだけは何とかしてもらいたい。

若いころはそこそこの読書青年だった。浪人時代に、受験勉強からの逃げだったかもしれないが、本を読み始めて好きな作家が何人かできた。彼らが青年時代に読んだ本や薦める書籍を片っ端から読んだ。小説類だけでなく、旧制高校生の三大愛読書が「善の研究」「三太郎の日記」「愛と認識その出発」と聞けば理解できないままに目を通し、亀井勝一郎の人生論や青春論を夢中になって読んだ。体系だった読書ではなく手当たり次第だった。
当時は小遣いも少なかったので岩波文庫に助けられた。その頃の岩波文庫は他の文庫のような表紙カバーはなく、定価は★で表示されていて、★ひとつが50円だった。「茶の本」や「桜の園」「共産党宣言」のような薄い文庫は50円で、いつも買った後喫茶店で読み終えた。コーヒー代も50円だったので100円で何時間か楽しむことができた。
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大学も文学部に入り下宿の四畳半は本であふれていた。週に2~3冊の本を読み、読後ノートも付けていた。しかし留年ののち退学処分を受け、一年後に他の大学に編入学してからは専門書を読むことに集中せざるを得なかった。就職後は仕事がらみの本を読むことが増えた。結婚して住んだ部屋の六畳間の天井まで壁一面の本棚に本をを並べていたら、遊びに来た友人に「寝ている時に地震がきたら死ぬぞ」と脅かされた。問題は家内が私の何倍かの読書家で一日中本を読んでいる。最高は一日に13冊読んだと言っていた。二人とも図書館には行かないので本は増え続け、そのころ蔵書数を数えたら4000を少し超えるくらいだった。

歳をとりはじめると、つまり老眼が始まるとだんだん読書と縁遠くなる。新しい知識への欲求が弱くなるのもあるが、読書が苦痛になるのだ。昔買った岩波文庫や古典の全集は活字が小さい。少し読んでいると目が疲れてくる、もしくはピントが合いずらくなる。そのうち老眼鏡の数だけが増えてきて、どれがどの度なのか分からなくなる。
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もう活字の小さい本は読めない。10年くらい前から終活の一環としてレコードやCD、VHSテープと並んで書物もヤフオクやアマゾンで処分し始めた。既に2000冊くらいは捌けたと思う。売れるたびに本を梱包しながら、買った時のことやうろ覚えの内容を思い出しながら娘を嫁に出すような気持になる。しかし持っていても読むことはもうないのだ。本箱の空きスペースは年々広がり、そこに家内が本やいろんなものを並べるようになった。気が付けばドア横に通販家具で作った隠し戸棚のような扉付きの書棚も、まだ読書意欲が私ほどは落ちていない家内の新書や文庫本、洋書に侵食されてしまった。
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昔読んだ円地文子の「めがねの悲しみ」というエッセイは見えすぎてしまう悲しみを綴っていたが、両目とも眼内レンズのお世話になっている後期高齢者は、眼鏡をしても年々衰えていく視力をボヤくばかりである。

野菜も値段が上がっているが果物も同等かそれ以上に高くなっている。わが家は朝食には必ずフルーツがつく。新婚旅行でカナダに行ったときに独身時代にろくな朝飯を食べていなかったため朝食のおいしさに驚き「うまい!」と言ったばかりにその時と同じ朝食が何十年続いている。パン、コーヒー、ヨーグルト、フルーツの4点セットだ。フルーツならサラダを作るより簡単だし。
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結婚して住んだのは新高円寺駅近辺だった。近くに三平ストアという低価格スーパーマーケットがあり、果物をいつも安く売っていた。リンゴや梨や柿など季節のフルーツがザルに4~5個のっていて200円だった。安月給だったので果物だけでなく食料全般をこのスーパーで買って随分助けられた。そんな昔と比べても仕方はないのだが、最近の果物の値上がりはひどい。今日も近所のスーパーでフルーツを選んだが、選択に悩んでしまった。秋の果物の中で梨は好きなもののひとつなのだが、1個で350円、2個で698円の値が付いている。最初に市場に出る幸水と比べると今の時期の梨は高いことは知っているが手を出しにくい値段だ。
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その他にも半年前は5個で398円だったキウイと4個で同じく398円だったグレープフルーツが共に498円に上がっていた。かつ値上げ幅を抑えるためか両方ともいつもより品質が下がっているような気がする。結局今日は4個で598円のネーブルオレンジを買ってきた。よく考えたらオレンジもこないだまで4個で398円だった。それが498円になり今では598円。それもサンキストなどの米国産はほとんど見かけなくなり、今日買ったものも南ア産だ。
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グレープフルーツもそうだがオレンジも南ア産はフロリダ産に及ばない。なぜ米国産を見かけなくなってしまったのだろうか。昔は車を輸出した船が手ぶらで帰るのはもったいないので安価な運賃で西海岸からフルーツを運んで帰った、という記事を読んだことがある。輸送費が安かったこともあるだろうが、最近は米国でも値上がりが激しいので日本が買い負けているのだろう。下図を見ると米国でもこの3年で約4倍になっている。
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為替レートも影響しているに違いない。2011年当時110円前後だった為替は今年は150円前後。去年398円だったものが598円になってもおかしくはない。輸入フルーツも国産の梨やリンゴもこんなに値上がりするのなら(国産品は猛暑と台風のせいで今年だけのことだと思いたい)、消費者は安い果物にシフトするか購入回数を減らすしか選択肢は残っていない。

農水省は「毎日くだもの200グラム運動」を提唱しているし、厚労省は令和14年度の果物摂取の目標値を200グラムと設定している。これはフルーツの摂取量が下がっているので農家保護のため国が動いているのだと思われる。ある調査でも果物の購入頻度は「ほとんど買わない」が1位で「週に1~2回」が2位となっている。この高値が続けば野菜より必需性の低い果物の購入頻度はさらに下がり、価格は上昇し買わなくなるという負のスパイラルに入り、我が家の朝食メニューに影響が出るかもしれない。

野菜や果物の価格が予想以上に高騰している。主婦はやりくりに四苦八苦し、生産者も異常ともいえる気候の変動に振り回される、とどのテレビ局も報じている。たしか同じようなことが一年前にも起きていた。
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我が家の家計簿をチェックすると、毎月の5~8万円の食費(飲料、酒、外食除き)のうち最大の支出は野菜でコンスタントに1万円を超えている。それに続くのは菓子、総菜・調味料、果物、肉、魚、パン、乳製品、コメなどである。ちなみに先月9月の食費は対前年比で+15.1%、野菜の購入費は同+48.6%だった。私は単なる野菜好きで菜食主義者ではないが野菜だけでこの上昇は年金生活者の家計へのインパクトが大きい。

今日もスーパーの野菜売り場で考え込んだ。葉物野菜が高い。いつも150円から198円くらいのホウレン草が398円だ。大晦日でも298円だったのに、この値段では主婦は素通りする。100円台で買える小松菜に流れる。隣にあるはずのセロリが今日は見当たらない。あまりに高くなって売れなくなり、傷むくらいなら仕入れないという選択をしたように思われる。セロリは意外と傷むものだ。私も小松菜にした。
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野菜価格の乱高下が続くので、大雨が降ると数日後に葉物野菜や根菜類が高騰すること、台風の後では露地野菜の値段が上がり、酷暑が続くと葉物野菜やトマト、ピーマンなどが高値になることは体験上憶えてしまった。生産者も大変であることは理解している。暑い日が続くと落花したり発芽しなかったりで生産量が減るし形の悪いものが増える。台風が来れば野菜だけでなくコメや果物にも大きな影響が出る。風や雨だけでなく最近は停滞する台風が多く日照時間が減るために生育不良を招く。台風のために年に一度の収穫がなくなることは親戚が果樹園をやっていたのでよく聞いた。その年の収入がなくなるのだ。生産量が落ちれば需給のバランスで価格が上がるのは市場の原理である。

農家の苦労も分かるのだが、年金生活の後期高齢者は自分の生活も守らねばならない。何件ものスーパーを廻る元気はないので、棚の前で値札を睨み、頭の中で数少ないレパートリーから今晩のメニューを考える。クリエイティブな作業といえばそうなのかもしれない。昨日までは涼しくて秋到来と思ったら、また暑さがぶり返した。しばらくはメニュー選び苦労しそうだ。
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最近はウェザーニュースが野菜価格の予報までするようになっている。そんなことより最近外れることが多い天気予報の精度を上げる方が大事なんじゃないの?

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