マーケティング爺のひとりごと

外資系7社でチューインガムから抗癌剤までのマーケティングを生業としていた引退老人です。使えそうなデータや分析、気になった出来事、思い出、日々思うことなどをボケ防止のため綴っています。にほんブログ村 経営ブログ 広告・マーケティングへ
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2025年04月

大学に入学してしばらくたってからサークルに入った。文学部でまわりは女子ばかりだったし、友達もすぐにはできそうになかった。一人で早慶戦を見に行っても楽しくもなかった。サークルにでも入ろうかと選んだのが邦楽サークルだった。

浪人生の時に毎晩聴いていたCBCの深夜放送で、尺八演奏家の山本邦山がシャープス&フラッツとニューポートジャズフェスティバルで演奏した「みだれ」が流れた。ベースと尺八だけだったが感動の一曲だった。尺八の音色と息遣いが想定外だった。これはやらねばと思った。翌日栄のオリエンタル中村に出かけ楽器売り場で一本だけ置いてあった尺八を買った。2000円だった。家に帰って吹いてみたが全く音は出ない。図書館に行って奏法を読んでも駄目で、譜面などは全くのちんぷんかんぷんだった。

その尺八を持ってサークルの部室に行ったら、上級生から「こんなものは尺八ではない」と言われた。師範にお願いして一本調達した。3万5千円だった。当時の仕送りが3万だったから相当の値段だった。週一回の師範の稽古と、部室での練習で段々音が出るようになって面白くなってきた。日に何時間も吹き授業もすっぽかして練習するようになった。ただ一年後に師範が交代して相性が悪くなり、師範の教える古典でなくジャズやポピュラーや新曲を吹くようになった。
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尺八は器用な楽器ではないが単音での表現力に優れている。音色に宗教性や哲学性を感じる人もいる。顎を動かして音の高低を出せるし、ムラ息という音楽で使う楽音とは呼べない雑音まで取り入れてしまう。西洋の管楽器が息のほとんどを楽音にすることができるのに対し、尺八は吐いた息の半分くらいしか音にならない。効率の悪い楽器だ。他の楽器と合奏したり伴奏をするためにはG管だE管など長さの異なる何本もの尺八を揃えねばならないのもやっかいだ。面倒な楽器だから逆に愛着が湧く。

学生の頃は山手線の中で吹いたり、飲み屋で吹いたりした。若気の至りだ。深夜の新宿で何人かで演奏し写真週刊誌に載ったりもした。大学近くの居酒屋で客の演歌の伴奏をして、「あの学生さんにビール5本あげといて」と言われたり、店の人から「演歌居酒屋にするから働かないか」などと言われたこともあった。ただ尺八に時間をとりすぎて大学を退学処分された。

今ではほとんど吹くことはない。鍵盤楽器や弦楽器を比べると管楽器は体力が必要で老人にはしんどい趣味になってしまった。毎日吹いていれば違うのだろうが、そこまではできない。大学時代の仲間がで一人だけ尺八を吹き続け、今でも名古屋駅前で虚無僧をしている仲間がいる。駅前で見かけたら立ち止まって聞いてあげてください。日本でただ一人の慶応ボーイの虚無僧です。
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どんな種類の製品でもブランド名はマーケティングの重要なファクターだ。ブランドイメージ形成の中心的存在であり、競合製品と差別化する手段でもある。医薬品の場合はその性格上効能効果がありそうな名前が要求される。ただ医療用医薬品の場合は製品名の混同による投薬ミスを最小限に抑えるために安全策が講じられ規制も多い。おまけにこの業界は歴史的にブランドより成分名で製品を訴求してきた過去を持つ。

子供のころよく聞いたペニシリン、ストレプトマイシン、バンコマイシンなどの抗生物質は物質名でありブランド名ではない。医療用医薬品でブランド名が前面に出たのは、切らずに胃潰瘍を治す画期的な薬剤だったシメチジンのスミスクライン社のブランド名である「タガメット」ではなかっただろうか。
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その点OTC薬品は医療用ほど規制もなくネーミングもかなり自由に決められる。それでも効能効果や有効成分にこだわることが多い。たとえばJ&J社が開発したTylenol(タイレノール)という名前は成分であるアセトアミノフェンの化学名N-acetyl-para-aminophenolから取られているが、知っているユーザーはほとんどいないだろうし、気にする人もいない。
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世界で最も多く服用されている医薬品と言われるアスピリンはアセチルサリチル酸製剤のバイエル社の登録商標だが、これはアセチル基の「ア」とサリチル酸がスピル酸とも呼ばれていてその「スピル」を結合させてアスピリンと名付けられた。

同じアセチルサリチル酸を主成分とするバファリンはバイエルの商標であるアスピリンを名乗ることができない。しかしアセチルサリチル酸が胃を荒らすのでダイバッファーという緩衝材を加えて胃粘膜を保護する処方を開発した。それを英語ではBuffered Aspirinと呼び、縮めてBufferinのブランド名が誕生したのだ。
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同じ鎮痛薬であるエキセドリンはそのアセチルサリチル酸(アスピリン)とタイレノールの主成分であるアセトアミノフェンとの合剤である。強い痛みに速く効くことを訴求して、Exceed Aspirin(アスピリンを凌駕する)の製品コンセプトを作り、それを簡略化してExcedrinと名付けられた。

医薬品は世界中で売られることが多いのでこういう成分がらみの英語ネーミングが多いのかもしれない。同じ鎮痛剤でも即効性を謳う国産の「ケロリン」や「ジキニン」は日本人には効能効果が分かりやすいが、日本人以外には?でしょうね。

相変わらずモノの値段が上がり続けている。3月の東京の消費者物価指数は予想を上回り、生鮮品を除くコアCPI は+2.4%だった。生鮮品除きの食料は+5.6%で、米類(生鮮品扱い)はなんと+89.6%という異常さだった。育ち盛りの子供を複数持つ家庭はやりくりに苦労しているだろう。
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エネルギー関連は政府の補助金で抑えられたがまだ+6.1%上昇し、生鮮とエネルギーを除外したコアコアCPIは+2.2%だった。昨春の賃上げは+5.4%と高かったが社会保険料と物価の上昇でほぼ消えると言われている。5.4%もの賃上げがなかった中小企業や年金生活者の生活はどうなっているのか。年金生活者であるわが家の1~3月の家計簿をチェックしてみた。

3か月間の食費は240,085円でひと月当たりでは約8万円。対前年比で+12.7%と結構な増加だった。一番増えたのは魚類の+84.5%だが肉類が-21.8%なので蛋白質源としては+24%で、肉から魚へシフトという老人らしい嗜好の変化と考えられる。次が麺類の+82.5%。これは昼飯を作るのが簡単なパスタ、うどん、そばなどに決め込んだためだ。三番目が外食費で+69.8%。先が短い老人は昔の仲間と会食したり飲んだりする機会が増えるので交際上の必要経費。そのあとには米類の+59.6%、卵の+53.6%と巷で話題になった最近の爆上がりの二品が入った。特にコメはいつも買う「つや姫5キロ」が前年の2800円から4400円強になったのが効いている。その他では菓子が+21.4%、野菜が+12.8%、果物が+12.7%と二けたの上昇だった。

食費の月8万円は2024年の家計調査の65歳以上の無職夫婦世帯平均の76,352円と比べても多くはないし、2025年版が出れば数パーセントは上がっていると思うので世帯平均に近いと考えられる。つまり食の細くなった老人世帯でも月8万の食費は必要なのだ。そもそも老人は耐久財などを買い替えることも少なくなり、旅行や食べることくらいしか興味がなくなりかけているのだから。今年年金は2.7%増えたのだが、このまま物価が上がるようだと他の支出を削るか貯蓄を取り崩すかしか選択肢は残っていない。おまけに4月は飲料など4000品以上の値上げが予定されている。

夏の参議院選挙前に与党は選挙対策として米やガソリン、電力などの物価高対策を打つと思うが、抜本的な改革は期待できず一時的な補助金かバラマキになると思われる。選挙が終われば補助は打ち切られるか削減されるだろう。今年も5%前後の賃上げが予測されているが、賃上げが企業製品の値上げを招き実質賃金はさほど上がらないループになるのだろう。それにしても上のグラフを見ていてもなんだか悪意の意図が感じられて納得できない。政府はいつまで生鮮品除きやエネルギー除外の指数を出し続けるのか。国民はその生鮮品やエネルギー費の上昇で苦しんでいるというのに。

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