マーケティング爺のひとりごと

外資系7社でチューインガムから抗癌剤までのマーケティングを生業としていた引退老人です。使えそうなデータや分析、気になった出来事、思い出、日々思うことなどをボケ防止のため綴っています。にほんブログ村 経営ブログ 広告・マーケティングへ
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2025年12月

スーパーの入り口に山積み特売されていた中華三昧を懐かしさから思わず買ってしまった。袋入り麺を買うのは震災の年に発売されたマルちゃん正麺以来だから14年ぶりだ。中華三昧を食べるのは44年ぶりではなかろうか。久しぶりに食べたが旨い麺だと思った。

中華三昧は1981年に発売された。当時インスタントラーメン市場は飽和状態で前年割れの年が続いていた。各社は新製品開発に力を入れ、高級化路線は停滞を打破する武器だった。大半の製品が35円から40円で売られる中で中華三昧は120円というプレミアム価格で発売された。中国四千年の幻の拉麺と謳うだけあって即席麺らしくない店の麵のような食感が売りだった。液体スープと粉末スープの二つが付いているのも驚きだったし、それまでのインスタント麺と比較しても確かにおいしかった。ただ頻繁に即席めんを食べる貧乏人には価格の敷居が高かった。また普通のインスタントラーメンに戻った。
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 インスタントラーメンの歴史は1958年のチキンラーメンに始まる。当時は即席ラーメンと呼んでいた。ラーメンが鍋を必要とせずお湯をかけるだけでできるというのは当時は大ニュースだった。スープは麺に噴霧されていて添付されていない。その頃店で食べると40円だったラーメンとほぼ同じ35円の値付けはかなり高く、しばらくは苦戦したが徐々に消費者の間に浸透した。年末に30円に値下げされ価格はその後10年間続いた。翌59年には6000万食が生産され、60年には同様の商品が30数社から発売され即席麺市場は年間4億食を超え競争の時代に入った。下の写真は新発売当時のパッケージ。即席ラーメンがどんなものか分かるように中身が見える窓があり、上部にはCHICKENではなくCHIKINとある。当然卵を乗せる凹はない。
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チキンラーメンは宣伝も派手だった。当時のテレビは全部生放送だったが、柔道ドラマの全枠提供をしていた日清食品は3分強のCM枠を使って、どんぶりにチキンラーメンを入れお湯をかけタレントが話をつなぎ3分経ったらふたを開けて食べるという広告だった。本当に3分で出来上がることだけを訴えるCMだった。しかしその広告を何度も見ていた私は当時チキンラーメンを食べた記憶がない。出前でとるラーメンは確か40円だったし、立ち食いのきしめんは20円だった。即席めんの30円は高すぎたのだ。

インスタントラーメンを一番食べた時期は下宿生活の大学生時代だ。金がなかったせいもあるがとりあえず空腹を満たせばよいという貧乏学生にとってはありがたい存在だった。4畳半の下宿のひと口コンロで小さな鍋に湯を沸かし麺を放り込み、残っている野菜があればそれも加えて鍋からそのまま食べた。特に仕送りが着く前の一週間はこれで飢えを凌いだ。

同級生の一人がアメリカに留学して暫くしてから何か欲しいものはあるかと聞いたら、インスタントラーメンを送ってくれ、それも新聞紙に包んで送ってくれるとありがたいと言ってきた。当時はアメリカのスーパーで日本の食品を見つけるのは大変だったので簡単に調理できるラーメンは貴重だったらしい。かつ食べ終わった後に包み紙の新聞で日本のニュースをゆっくり読むのは最大の楽しみだったと後で聞いた。

隆盛だった袋物即席めん市場も1971年に日清がカップヌードルを100円で発売するとカップ麺が主流となり始め袋麺は勢いを失いはじめる。カップヌードルの発泡スチロール容器は包装材であり、調理器でもあり、食器になるというマーケターにとってはえらくショッキングなパッケージだった。同時にこのあたりからインスタントラーメンが国際化されていく。
食べ終わった中華三昧のパッケージを眺めながらそんなことを思い出した。それにしても44年前に120円で売り出された中華三昧が特売とは言え99円で売られているのもある意味ショックだった。

時々急に食べたくなる菓子がある。森永ミルクキャラメルやサクマドロップスだが、それらは既にこのブログで書いた。今日スーパーで思わず手に取ったのはボンタンアメだ。箱を開けるとオブラートに包まれた黄色の飴が現れる。もちもちした食感で弾力ある噛み心地。ちょっとグミのような食感だ。甘みも果汁感も淡泊で何粒も続けて食べたくなる。
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製造販売しているのは鹿児島のセイカ食品という会社で九州、特に南九州で強い地盤を持っている。ただボンタンアメとアイスクリームの「南国白くま」は全国区の定番商品だ。近所の小さなスーパーでも駅のキオスクでもボンタンアメを買うことができる。子供のころに食べた記憶はないが、上京してから食べるようになった。飴としては甘くなくキャラメルよりも腹持ちが良いのが特徴だ。

腹持ちが良いのはもち米を使っているせいだろう。菓子問屋と水あめ製造を生業としていた創業者が地元で食されていた朝鮮飴をモデルにしてもち米と水あめで飴菓子を作り、そこに名産の文旦果汁などを加えて製品化した。当時大人気だった森永のミルクキャラメルと同様のサックに詰め、若いころ奉公していた天狗煙草の宣伝を模してチンドン屋を使ったり製品名をトラックやオート三輪を全国で走らせての広告活動で拡販をした。
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上のパッケージを見てわかるようにボンタンアメは1925年発売で今年が100周年となる。バラ売りだった森永ミルクキャラメルが現在の形になって発売されたのが1913年であることを考えると、地方で誕生したボンタンアメが100年生き延びていることは稀有な例だ。独特の食感で他製品との差別化ができていることもあるが、米粉ならではの製造上の問題点を解決し、寒さで硬くならないよう、暑さで溶けないように改良してきた努力も貢献している。戦時中は南方戦線でも食されていたらしい。内装紙にオブラートを使用しているのも粘着度が高いもち米由来の弱みを強みに変えたうまいアイデアだ。

数年前にセイカ食品は株式会社設立100年を記念して「One Day」という映像を制作した。出社した社員が事務所を解錠してから退社時にタイムレコーダーを押して施錠するまでの会社の一日を10分のムービーにしたものだ。朝礼や出荷作業などと共に工場の製造現場の映像も含まれている。工場はきれいだが製造設備は相当古い。工程の細部が見て取れる稼働スピードだし、部分的に木材を使っている機械は菓子業界にいたことがある私は見たことがない。
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一番驚いたのはサック箱入れの作業が手作業だったことだ。年間売り上げ300数十億の中小企業とは呼べない規模の企業がいまだに手作業とは。一日に60万粒の製造キャパはここにあるのかもしれないが、機械化を阻む理由がなにかあるのかもしれない。今年「国宝」など長時間映画がヒットし、巷ではボンタンアメを上映前に食べると尿意が抑えられてトイレに行かなくて済むという噂が流布し各地で品切れが発生した。糖質が一時的に尿意を抑えることはあり得るらしいが単なる都市伝説だろう。ただあの工程が機械化・自動化されていれば欠品を防げたのではなかったのか、と元飴屋は思ったのです。

40数年間ゴルフをしているがちゃんと習ったことは一度もない。父親にグリップの握り方、腕の三角形を維持すること、テイクバックは30センチまっすぐに引くこと、テイクバックで左の方がフォローで右の方が顎に当たるように、を聞いただけであとは自己流だ。運動神経もないので、うまくなるはずもないのだが。最近のコンペで2度続けて大たたきをして意気消沈して帰宅した。もうゴルフを辞めようかと思った。ただこのまま辞めるのもちょっと悔しい。辞める前に一度レッスンを受けてみよう。それで駄目なら潔く諦めよう。

我が家の徒歩15分以内にはゴルフスクールが7~8箇所ある。一番近いのがライザップ、その他にチキンゴルフ、ゴルフパフォーマンスの3店がパーソナルトレーニングが可能だ。全部インドア練習場でシミュレーション機器が揃っている。近くにはグループレッスンをするスクールもあるが今回は上記の3スクールに候補を絞った。
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ライザップゴルフ。全国で19店舗ながら知名度は一番。もともとはダイエットや英会話のように三日坊主になりやすいものを個室で専任トレーナーが特訓をし、スクール外でもスマホでチェックが入るという生徒を追い込むことで成功を収めたビジネスモデルをゴルフ領域に拡大したものだ。結果にコミットするが売り文句で駄目なら返金するという。ただ値段が高く、一番安い週2のレッスンを2か月(16回)で料金は40万円を超える。それに入会金が5万5千円。最後の賭けとは言え引退老人には少しきつい。しかし1レッスン時間は他が50分に対して90分と長い。
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ゴルフパフォーマンス。31店舗で展開中。ライザップ同様完全個室のマンツーマンレッスンが売りだ。レッスン5回のトライアルコースが9万8千円。12回のベーシックコースが19万8千円。18回のプレミアムコースが29万8千円(税抜き)。ここも満足できなかったら全額返金制度や100切りコース終了後5ラウンド以内に達成できなかったら全額返金とある。入会金は3万円。他のスクールは一日一レッスンだが、ここは一日二レッスンが可能。
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チキンゴルフ。全国に34店舗。ライザップとGパフォーマンスが専任トレーナーによるパーソナルレッスンなのに対し、チキンは50分のレッスンを一人のトレーナーが25分ずつを二人に交互にするセミパーソナルレッスンだ。その分価格が安いし回数制限のない「通い放題」コースが売りだ。値段は2か月通い放題が23万7千円、4カ月が38万4800円、6カ月が49万9800円、12カ月が79万9800円。トレーナーは専任ではなく日によって変わる(指名は有料だが可能)。入会金は3万5千円。

完全個室でマンツーマンの2店舗は2か月コースを想定すると1レッスン当たり2万円前後の価格となる。いい値段だ。ライザップは高額を正当化する「結果にコミットする」を売り文句にし、Gパフォーマンスはコースティーチングとクラブフィッティングで付加価値をつけている。両者とも全額返金保証制度を謳っている。チキンゴルフは価格と通い放題を訴求し、楽しみながら習える「敷居の低さ」を前面に出している。一応差別化らしいことはしているんだ。

実際の利用者のコメントも調べてみた。どの店舗も最新機器で自分のフォームや弾道を確認でき、コーチに改善点を指摘してもらえることは高評価だ。ライザップは高額だが自己流の練習と比べると費用対効果が優れているという声もある。Gパフォーマンスはレッスンのみなので習ったことを自主練する時間が追加で必要となるとの意見もあった。各店舗は駅に近くて便利なので無料の自主練習の時間予約が困難だという不満も共通している(特に夜間と週末)。ライザップとGパフォーマンスは専任コーチ制なのでコーチをの相性が悪いことも起こりうる(変更依頼は可能)。チキンゴルフは専任ではないので日によってコーチが変わり指導の一貫性に欠けるという不満も見られる。

そんなことを調べた後にカウンセリングとお試しレッスンを受けにチキンゴルフに行きその場で入会を決めてしまった。2か月の通い放題平日コースで値段は約19万円。入会金は免除だった(ライザップやGパフォーマンスでも同様のプロモーションをしているようだ)。決め手は値段と通い放題で時間のある引退老人には月~金の17時までの時間で全く問題ない。さ、来週から生まれて初めてのレッスンだ!

大学生の時に夜は広告コピーの勉強をするために渋谷にあった専門学校に通っていた。途中の宮益坂に仁丹ビルがありそれを目印にしていた。1963年に仁丹の東京支社として建てられたビルは夜になるとビル全体が煌々と輝き廻りを席巻していた。当時の渋谷のランドマークだった。仁丹の全盛期だったと思う。
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卒業して入った広告代理店ではコカコーラの担当だったが、その会社は仁丹もクライアントだった。60年代には成人男性の喫煙率が80%以上あり、仁丹も「タバコに仁丹」で販売増を誇ったが、年々たばこ離れが始まり、サラリーマンの必需品だった銀粒仁丹の売り上げも下降していた。おじさんからのターゲットの拡大を狙っているらしく仁丹グループの席からはグリーン仁丹やレモン仁丹のCMソング案がよく聞こえてきた。あれだけ中年男性にリンクした製品を若い人向けに拡げるのは大変だろうなと思いながら聴いていた。

その後仁丹を意識したのは菓子の会社に転職をしてクロレッツを開発した時だった。競合相手は当然ロッテのグリーンガムだったが、マウススプレー、ミント菓子や仁丹も想定される競合製品だった。仁丹は中高年男性に深く浸透していて朝の駅で使用しているところを良く目撃した。当時まだ煙草屋が多くあり必ず仁丹も併売されていた。ただ仁丹の問題点はおじさんたちの口臭や二日酔いに特化された使用理由で、使っているところを見られると「タバコやニンニクの匂い消し」「二日酔いなんだ」と思われてしまい人前で使うのを憚られる反面教師的な製品としてだった。この種のタブー商品は効能効果を直接訴えると買いにくくなるし人前で使いにくなる。だからクロレッツの初期の広告は効能訴求をしながらのユーモア路線しか選択の余地はなかった。

その仁丹がリブランディングをしたと日経クロストレンドに載っていた。会社も半ばあきらめていた発売130年の創業ブランドを再軌道に乗せたのは前々年に新卒入社の女性社員だ。かつては日本で最も売れている市販薬だった製品を新入社員に託すのは勇気もいるが正しい選択だと思う。昔を知っている社員は社名の元になっている製品やブランドのプロポジションを変える勇気を持てないのが普通だ。過去を知らないからこそ固定観念やブランドイメージに邪魔されずに製品価値や存在理由に目を向けることができる。

最初に彼女がしたことは仁丹の使用目的を4象限にグリッド化したことだ。横軸に「誰に向けた製品か」縦軸に「植物由来か非植物由来か」をとり、そこに競合と目される製品をプロットした。それまでの仁丹が他人に不快感を与えないためのエチケット製品だったものを自分のための気分転換ブースター的な製品にリポジショニングしたのだ。新しいポジショニングは「自分のために使う健康に良い口中清涼剤」とななる。口臭も二日酔いも胃もたれも触れられていない。ネガティブ要素を除いて自分を上げる要素だけになっている。よい変更だ。
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ただ縦軸のとり方には多少問題がある。植物由来で切るのは自社ブランドに都合がよいだろうが、ポジショニングは「消費者の意識の中で競合と比べたマップ上のどこに自社製品が位置するか」と定義されるので、食物由来かどうかを気にしない他社製品の消費者のことは斟酌されていない。またマウスウォッシュや口中清涼剤を自分のために使用する人の方が多いと思われるのでこれも若干恣意的ではある。

ただネガティブ要素を排除し自分のお守り的製品にしたことは評価できる。同時にポジショニングを変えてもパッケージやキービジュアルを維持していること、生薬であること、医薬部外品、カフェインレスでシュガーレスであるアセットを訴求しているのも評価できる。この成功のせいかどうかは分からないが仁丹の業績はこの3年間増収総益だ。彼女は社長賞くらい貰ったのだろうか。

かつては日本最大の大衆薬であり、長い間日本の大広告主であり、中年男性を中心に愛された仁丹。1980年代のピーク時と比べると売り上げはわずか3%にまで落ち、一時は会社の存続も危うかった。昔銀行から仁丹を買収しませんかと話があった。ブランド価値を調べたが提案額には及ばず話は進まなかった。そんなブランドが再生されて頑張っているのを見るのは老マーケッターとしては喜びに堪えない。頑張れ!仁丹。

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