子供のころから広告が好きだった(40)
生まれてから幼稚園まで住んでいた社宅の玄関横にはトマトが植えてあった。夏になるとそれをおやつ代わりに食べた。塩をかけて食べたのだがそんなに好きではなかった。野菜でもない、果物でもない蝙蝠の様な食べ物だと子供心に思っていた。
トマトジュースもドロッとした食感が嫌いだった。それにトマトジュースはポピュラーではなかった。我が国では昭和8年にカゴメ(当時の社名はは愛知トマトソース製造)が製造を開始し瓶入りの高級品だった。戦争で中断の後、昭和24年に製造を再開し30年代に缶入りにしてから需要が伸び、昭和38年にはデルモンテが参入して市場が拡大した。高度経済成長のひずみとして食品公害が表面化し、消費者の天然・自然・健康志向が高まったことも成長の後押しをした。
昭和47年にカゴメがテレビ広告を大々的に展開し始めた。「お酒を飲んだ翌朝は」のキャンペーンだ。九里洋二、太地喜和子、黒柳徹子、ちあきなおみと毎年酒豪タレントを起用したがやはり初年度の田辺茂一の印象が一番強い。紀伊国屋書店の創業者社長で「粋人」「日本一働かない社長」「夜の市長」などと呼ばれ、夜な夜な銀座で飲み歩くことで有名だった。その粋人がガウン姿で「夜の銀座より、朝のトマトジュースの方がいいや」と言いながら飲むトマトジュースは大人だけを対象にしたちょっと変わった飲料だった。大学生時代映画を見に行くとシネアドには必ずこのCMが入った。時々紀伊国屋で本を買っていたし、彼が慶応出ということは知っていたのでその大学を退学処分され他の大学に編入したばかりの自分はちょっと複雑な心境で遊び人社長の広告を見ていた。

このシリーズ広告は5年続き、そのあと渡哲也の「しみるなあ、風呂あがりの一杯」に替わる。後ろ向きの二日酔い対策から積極的な健康管理に舵を切ったのだ。競合のデルモンテは慌ただしい朝の食卓にトマトジュースを加えることを訴求し、昭和51年にはキリンも参入し「赤い戦争」が始まった。3社で8割を超えるシェアを持つ寡占状態がしばらく続いた。

最近は下降が止まらない野菜ジュースを尻目にトマトジュース市場は伸び続けている。スーパーマーケットでは前年比+50%というところも昨年あった。アスタキサンチンと並ぶ抗酸化成分であるリコピンが注目されていること、リコピンにGABAを加えたコレステロールや高血圧対策の機能性表示製品が市場を引っ張っている。トマトが値上がりしていることもあって料理用に無塩のトマトジュースが使われることも一因らしい。
市場の5割強を押さえるカゴメの強さは変わらないが、デルモンテと紙パック、缶、PETを揃えた伊藤園が20%前後のシェアで2位の座を争っている。3社で9割占拠だ。デルモンテは7月に米本社が破産法の申請をしたが、日本ではキッコーマンが1989年に事業を買収した日本デルモンテが製造販売をしているので大きな変化は起こらないかもしれない。カゴメはジュースだけでなくスーパーの高リコピンの生トマトの販売や、ネット通販で機能性表示食品の販売に力を入れている。私も先日ネット広告を見てケース買いをしてしまった。


生まれてから幼稚園まで住んでいた社宅の玄関横にはトマトが植えてあった。夏になるとそれをおやつ代わりに食べた。塩をかけて食べたのだがそんなに好きではなかった。野菜でもない、果物でもない蝙蝠の様な食べ物だと子供心に思っていた。
トマトジュースもドロッとした食感が嫌いだった。それにトマトジュースはポピュラーではなかった。我が国では昭和8年にカゴメ(当時の社名はは愛知トマトソース製造)が製造を開始し瓶入りの高級品だった。戦争で中断の後、昭和24年に製造を再開し30年代に缶入りにしてから需要が伸び、昭和38年にはデルモンテが参入して市場が拡大した。高度経済成長のひずみとして食品公害が表面化し、消費者の天然・自然・健康志向が高まったことも成長の後押しをした。
昭和47年にカゴメがテレビ広告を大々的に展開し始めた。「お酒を飲んだ翌朝は」のキャンペーンだ。九里洋二、太地喜和子、黒柳徹子、ちあきなおみと毎年酒豪タレントを起用したがやはり初年度の田辺茂一の印象が一番強い。紀伊国屋書店の創業者社長で「粋人」「日本一働かない社長」「夜の市長」などと呼ばれ、夜な夜な銀座で飲み歩くことで有名だった。その粋人がガウン姿で「夜の銀座より、朝のトマトジュースの方がいいや」と言いながら飲むトマトジュースは大人だけを対象にしたちょっと変わった飲料だった。大学生時代映画を見に行くとシネアドには必ずこのCMが入った。時々紀伊国屋で本を買っていたし、彼が慶応出ということは知っていたのでその大学を退学処分され他の大学に編入したばかりの自分はちょっと複雑な心境で遊び人社長の広告を見ていた。

このシリーズ広告は5年続き、そのあと渡哲也の「しみるなあ、風呂あがりの一杯」に替わる。後ろ向きの二日酔い対策から積極的な健康管理に舵を切ったのだ。競合のデルモンテは慌ただしい朝の食卓にトマトジュースを加えることを訴求し、昭和51年にはキリンも参入し「赤い戦争」が始まった。3社で8割を超えるシェアを持つ寡占状態がしばらく続いた。

最近は下降が止まらない野菜ジュースを尻目にトマトジュース市場は伸び続けている。スーパーマーケットでは前年比+50%というところも昨年あった。アスタキサンチンと並ぶ抗酸化成分であるリコピンが注目されていること、リコピンにGABAを加えたコレステロールや高血圧対策の機能性表示製品が市場を引っ張っている。トマトが値上がりしていることもあって料理用に無塩のトマトジュースが使われることも一因らしい。
市場の5割強を押さえるカゴメの強さは変わらないが、デルモンテと紙パック、缶、PETを揃えた伊藤園が20%前後のシェアで2位の座を争っている。3社で9割占拠だ。デルモンテは7月に米本社が破産法の申請をしたが、日本ではキッコーマンが1989年に事業を買収した日本デルモンテが製造販売をしているので大きな変化は起こらないかもしれない。カゴメはジュースだけでなくスーパーの高リコピンの生トマトの販売や、ネット通販で機能性表示食品の販売に力を入れている。私も先日ネット広告を見てケース買いをしてしまった。


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