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昔ドロップは筒状(穴あきドロップ)か缶入りしかなかったように思う。筒状の物は湿気でくっついて棒状になったし、缶入りは開けるのに苦労した。今でも時々無性に舐めたくなるのがこのドロップ。思わずレジ横の棚に手を伸ばしてしまう。果汁入りとは書いてあるが果汁感はあまりない。口に入れてしばらくすると割れるのは砂糖より安い水飴の含有量が多いからだろう。近所のスーパーでは100円強で売られているのだが、利益は出るのだろうか。ま、ドロップそのものは缶の半分くらいしか入っていないが…

缶入りは佐久間製菓のサクマ式ドロップスとサクマ製菓のサクマドロップスとがあり、今回衝動買いしたのは後者の製品。そんなに差はない。もともと池袋にあった佐久間製菓がサクマ式ドロップスを製造販売していたが戦争中に倒産し、戦後元番頭だった人が再建した佐久間製菓と、同じころ元社長の息子が渋谷に起こしたサクマ製菓の二社だから製品が類似していても当然かもしれない。同じような缶に入っているが色が異なる。佐久間製菓が赤が基調でサクマ製菓は緑が基調。佐久間の缶はこんな感じです。
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当然のことながら商標争いが起き、裁判の結果佐久間製菓がサクマ式ドロップスを名乗り、サクマ製菓は社名を用いたサクマドロップスを使用することで決着がついた。消費者から見るとちょっと紛らわしい。菓子の仕事をしているころ、業界の人はこの二社を池袋佐久間と渋谷サクマとか(略して池サクと渋サク)、漢字の佐久間とカタカナのサクマと呼んで区別していた。野坂昭如原作のアニメ映画「火垂るの墓」で主人公清太が終戦後の8月22日に飢えと病で死んだ妹の節子を自ら火葬し、その骨片を彼女の大好物だったドロップの缶に収めたのは赤い缶の佐久間製菓のサクマ式ドロップ缶だった。

サクマ式ドロップスは戦争中は生産中止だったので、清太が腹巻の中にしまって大切に持っていた節子の骨片を収めたドロップ缶は数年前から持っていたものだと思われる。その清太も一月後に三ノ宮駅で衰弱死してしまうという悲しい話だった。
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甘いものといえばキャラメルかドロップだった時代がありました。もう遠い昔です。先日の報道で佐久間製菓が2023年1月で廃業するというニュースが流れたのでこの記事を加筆再掲しました。原材料の高騰とそれを価格転嫁できなかったことが理由らしいが、寂しいと思うのと同時に戦後をひきずっていたあの懐かしい時代が終わったという感傷に襲われました。あのハッカ味、なつかしいね。

ちなみにニュースが流れた後佐久間製菓のドロップスは品切れが起き、ネットでは数千円で売られています。今日近所のスーパーに行ったらサクマ製菓のサクマドロップスも棚から消えていました。
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