私が住むマンションは400戸を超えるマンションで、十数人の旧地主の地権者、100戸近くを所有するUR、私のような普通の組合員、それに十数件の店舗からなるので関心も地元への愛着も様々だ。理事長として最初で最後の総会なので結構緊張することになる。30年以上経っているので過去に理事長や理事をやった80代の爺さん婆さんがたくさんの質問をしてくるのは予想できる。彼らは過去の細かいいきさつや、管理規約に則っているかなどの子細な点を突っつくばかりで大きなビジョンを描くことは不得手のようだ。そこを攻めると「その頃まで生きていない」と逃げを打つ。
議題も8件あり3時間の予定では終わらないかもしれない、と不安を抱えて総会が始まった。例年議題に関係ない意見を延々と述べる老人がいるので、冒頭にそのような発言を続けると発言中止、それでも辞めないと発言禁止、それでも駄目なら退場もありうると通常よりも強いメッセージを送った。1号議案は事もなく承認され、給排水管工事に関する2号議案も可決された。3号議案はエレベーター関連で諮問委員会がうまく説明してくれたのでなんとか終了。残された議案のうち管理規約の改定を含む特別決議が必要な役員数変更議案あたりから細かい質問が増え始め予定の3時間を超えた。
一番揉めそうな管理委託契約(委託費の値上げ)はまず管理会社が簡単に背景を説明した。これ以上続けると値上げする側の説明でマッチポンプになるので私が引き取って数字を使って説明した。まず近隣30のマンションの平米当たりの管理費の比較。過去からの管理費の増減。次に国交省発表の全国のマンション管理費との比較。住民アンケートによる管理会社の評価結果。最後に合い見積もりをとるまでの経過(結局どこも人手不足で新規に大規模マンションは担当できないと辞退)、値上げを受けた場合の管理費のキャッシュフロー予測、まで進んだところで元理事長の一人から説明が長すぎる、そんなことは知っているとクレームがつく。反論しようと思ったがここでもめるとさらに時間をとるのでぐっと我慢する。予想したように清掃の回数がおかしいとか管理の質の劣化が進んでいるとか旧理事長たちから質問が続出。管理会社に答えてもらってなんとか採決&承認。やっと5時間強の総会が終わる。
予想したように質問のほとんどは旧地主、元理事や理事長経験者の高齢者のみ。養老院の会議はこのようなものだろうという気がするくらいだ。初めて総会に出た若い人は多分次からは出席しないかもしれないし、役員になろうとは思わないだろうと思う。老人たちのほとんどは過去の資料を保管していて、管理組合に異議を唱えるのを趣味にしているようだ。関心を持つのは良いことなので文句を言う気はないが、将来を見据えた考察や提言があったらありがたいとは思う。総会終了後に理事会メンバーから感謝はされたがどっと疲労が出た。
部屋に戻って保管していた管理組合関連の資料をすべて処分し、個人情報を含む資料は管理事務所に持ち込んでシュレッダーにかけてもらった。もう組合活動にかかわることは二度とないだろう。仕事をしたという充実感もあったが、疲れることの方がはるかに多かった。理事長を経験したばかりにそれまでリーダーシップがあると思っていた人がそうでもなかったり、愛想のいい老人と思っていた住人が実は何度も「訴えてやる」と叫ぶモンスター・クレイマーだったりと知らなかった方が良いことも多々あった。これからは毎朝メールボックスを開くたびに管理室からの「新しい意見書が届けられました」とか「xx様からクレームが来ました」というタイトルのメールが来ているのではないかとビクビクしなくてもよいことが一番うれしい。

























































































