マーケティング爺のひとりごと

外資系7社でチューインガムから抗癌剤までのマーケティングを生業としていた引退老人です。使えそうなデータや分析、気になった出来事、思い出、日々思うことなどをボケ防止のため綴っています。にほんブログ村 経営ブログ 広告・マーケティングへ
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タグ:TOTO

現在住んでいるマンションも築30年近くになってガタが出始めた。特に水回りが問題で、洗面所、風呂場や台所の水栓はちょっと危ういし、バスタブや洗面台やガスコンロ、レンジフードも傷んできた。15年前に取り換えたアラウーノも調子が悪い。テレビでヤマダ電機のリフォーム番組を見て、ヤマダを含む数社に見積もり依頼をした。

最初に下見に来たのは地元の建築設計事務所で一級建築士の若い女性社長とおじさんデザイナーの二人組だった。たっぷりと時間をかけて台所、浴室、洗面所、トイレの採寸をし写真を撮り、問題点を洗い出して細かい提案をした。90分の時間を使った。いい仕事をしそうだが値段が高そう、が印象だった。

二社目はよくチラシが入っているこれも地元のリフォーム屋で、えらく簡単に採寸をし喋りまくった。自社で職人を抱えているのでた他社より早く工事に取り掛かることができると言う。計算機を取り出してフォーマットを埋めだし5分ほどで見積もりを完成させた。予想よりかなり高額の見積もりだった。それを感じたのか、オプションを外せば下げられますと言って帰っていった。

リフォーム会社の一括紹介も頼んだので結局6社が自宅に来て採寸をし、見積作成のためこちらの希望を細かく聞いた。一社当たり50分から90分の打合せなので結構疲れる。フェアな比較をするために、キッチンではビルトイン食洗器、ワークトップは人造大理石、IHでなくガラストップのガスグリル、上の棚は下への可動式、トイレはウォシュレット付きタンクレスで蓋が自動開閉などの条件を設定した。6社のうち男女ペアの2人で来たのが2社であとの4社は男性社員ひとりだった。設備メーカーはTOTO、リクシル(INAX)、クリナップ、パナソニックなどに限られるので価格が最大の判断基準になる。あとは工事のクオリティだがこれはやってみないと分からない。ほとんどの会社が分厚いカタログを置いて行ったのでこんなにたまってしまった。
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一週間後から見積もりの提示が始まった。水廻り4か所だとそこそこの金額になるので各社力が入っているのが分かる。最初の段階でおおよその予算を示したが、この春に原材料と輸送費の高騰で設備メーカーはかなりの値上げをしたし、リフォーム業者も春と秋に価格改定(水廻り4か所で50万円くらいは値段が上がっている)をしたところが多いので予算を超える見積もりばかりだ。比較すると総額で100万円の差が出た。同じメーカーの同じシリーズのキッチンや浴槽でも20万円の差が生じるし、同タイプのトイレでも10万の違いが出た。総額の低いところを選ぶのは当然だが、同じ製品の価格差も参考にして最終的に業者選択をした。

予想した通りTVで30分のリフォーム番組を放映し全国展開しているヤマダリフォームは安い。地元の工務店でヤマダの水回り4点まるごとリフォームを意識してほぼ同額を提示する会社もある。しかしヤマダはトイレ以外は子会社のハウステック(旧日立ハウステック)の製品なので値段が安いのは当然かもしれない。そのヤマダも正式な見積もりはテレビショッピングより20万以上高くなっていた。ネットで口コミを見ると満足している人と同じくらいの不満がある。施工を下請けに出していて、時には孫請けもあり依頼主の要望がうまく伝わっていないことが原因であるように思われる。

2004年まで許されていた断熱材のアスベスト(浴室壁裏などに使われている)の処理に関しても、見積もり時に見込む会社もあれば、工事してアスベストが使われていることが分かった場合に約5万円の処理費がかかると説明する会社もある。一方で全くそれに触れない会社もある。後で追加請求される可能性が高い。また節水などを可能にする工事には来年の3月までなら「こどもみらい住宅支援金」が出るが、それを話題にもしない会社もあり、支援があると説明してもその金額がほぼ同じ工事なのに6万から11万までの差が生じる。

結局6社は高値の3社とそれより数十万安い3社に二極化した。見積もりは3社程度が妥当と言われるが、高値の3社だった可能性もあるので今回の6社は正しかったのかもしれない。低価格の3社から見積もりとメーカー選定が妥当と思われる中堅会社を選んで契約にこぎつけた。見積もり依頼から契約まで約一ヵ月。結構疲れる作業だった。



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子供のころから広告が好きだった (25)

私が勝手にタブー商品と呼んでいる製品群がある。使っていることを人には知られたくない製品で、広告が打てない(打ちにくい)もしくは広告が見ている人を不快にさせるような製品のことです。生理用品、コンドーム、かつら、痔や水虫薬などが入ります。他人のいるところでは買うことを躊躇する製品とも言ってもいいのかもしれません。ま、最近はそういう恥じらう傾向も無くなりつつあるようですが。
2022-05-16
1982年戸川純がおしりを突き出しながら「おしりだって洗ってほしい」という当時としては衝撃的なコピーを用いたTOTOウォシュレットのテレビCMが流れ始めた。それまでトイレの広告は新聞社や雑誌社から出稿拒否されていたことに加えて食事の時間に流れたこともあり「食事をしている時に便器の広告とは何を考えているのか」とクレームが殺到したらしい。ほんわかした戸川純の台詞回しや広告全体のトーンもあって批判も薄れその年を代表する広告となった。当時約15万円もしたウォシュレットは5年後には累積100万台を超えるヒット商品となり、訪日中にホテルでその快適さを経験した俳優やロック歌手が買って持ち帰るようになった。

その20年前。「40年間お待たせしました」「アンネの日と決めました!」という男にはよく分からない広告が女性誌を中心とした活字媒体に出稿された。月経とか生理日というダイレクトな表現でなく「アンネの日記」からとられた社名と製品名を前面に出したネーミングと広告活動でそれまで使われていた脱脂綿を駆逐し「水に流せる肌着」と言われたナプキンの時代を創りあげた。女性の心理的圧迫感を解放したが、それ以上に人前で口にすることがためらわれ生理日を「今日はアンネなの」と言わしめた功績の方が大きかった。
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こうしたタブー商品の広告表現は機能をストレートに表現すると嫌悪感を持たれたり、人前で使うことを憚られたりするリスクがある。後年生理用品のテレビ広告規制が解除された時に放映されたCMで、吸水性を誇示するために着色された水を製品に注ぐシーンの違和感というか不快感を今でも覚えている。こうしたマイナス面を避けるため広告主は機能表現にユーモアを使ったりオブラートに包むように穏健にしたり、機能的ベネフィットを心理的情緒的ベネフィットに転換したりと様々な手法を駆使する。

ウォシュレットの広告は今まで陽がが当たることがなかった便器やおしりに市民権を与えた初めてのCMだと思われるが、ネガティブ面を全く感じさせなかったのはコミカルに添えられた「おしりだって洗ってほしい」の一言だった。このメッセージのおかげで効能効果や便益にはほとんど触れていないのに、見終わった後に機能と爽快感がちゃんと伝わってきた。アンネナプキンも「アンネの日」と言い換えることによって生理日を日陰者扱いから救い出し、その機能性・簡便性によってアンネの日でも女性を活動的に変えることに成功したと言えるだろう。しかし大手の参入により業績が悪化し、吸収合併されるうちアンネブランドは消え、やがて会社そのもの消失してしまった。



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